社会に普及しているガラスやシリコーンゴムなどの透明な材料は、半導体に代わる次世代材料として注目を集めています。半導体と異なり透明な材料は、材料内部にも色々な機能を3次元的に持たせることができ、かつ透明性や絶縁性、化学的に安定であるなどの優れた特徴があります。我々の研究室では、医療機器やバイオチップ材料として利用されているシリコーンゴムに着目し、レーザー誘起バブルと呼ばれる気泡を使った微細加工技術について研究を行っています。
動画1 レーザー照明により、10⁻⁹秒の時間スケールで気泡が形成される様子
1960年にレーザーが発明されて以来、レーザーは私たちの生活の中で欠かせない技術になりました。身近なものではバーコードの読み取りやDVD再生、手術、工場での精密加工など、さまざまな分野で利用されています。その中で、「レーザー加工」という技術は、光のエネルギーを利用して金属やガラス、プラスチックなどの材料を接触することなく切ったり削ったりする非常に便利な技術です。
初期のレーザー加工は、熱を使って材料を溶かす「熱加工」が中心でした。レーザーをあてると材料が溶けたり蒸発したりして加工できますが、熱影響によりが周囲に焦げや変形が起きることがありました。そこで登場したのが、超短時間だけ光を出す「パルスレーザー」です。中でも「フェムト秒レーザー」は、1秒の1000兆分の1という非常に短い時間に強い光を照射し、ほぼ熱を出さずに材料を加工できます。これにより、ガラスの内部や細胞など、熱に弱い物質も精密な加工や治療ができるようになりました。
このようなレーザー加工の発展の中、我々は「レーザー誘起バブル」に着目しました。レーザーを液体の中に集光すると、その場所の温度が一気に上昇し、液体の一部が一瞬で蒸発して小さな気泡(バブル)になります。この気泡は、ナノ秒(10⁻⁹秒)からマイクロ秒(10⁻⁶秒)という短い時間で膨らみ、また収縮します。そのときに生じる物理現象をレーザー光を照明として利用し解析することで、我々はバブルを利用した新しい加工技術を開発しました。例えば熱硬化する前の液体ゴム材料(シリコーンなど)の内部にレーザーを照射して、バブル形成・連結することで微小なトンネルや空洞を作ることができ、我々はこれを「レーザー誘起バブル支援加工」や「microFLIB(Micro Fabrication using Laser-Induced Bubble)」と呼んでいます。この方法を使うと、材料の外側を傷つけずに内部だけに三次元の中空構造を高速に作ることができるため、マイクロ流体デバイスや光導波路など、次世代の精密デバイスの製作に役立っています。レーザー誘起バブルは、目に見えないマイクロ、ナノスケールの小さな世界で起きる現象ですが、その応用は大きく、将来の医療やバイオ、電子デバイスの分野でも期待されています。
※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。