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On-Site Visualization を使った安全・危険情報の可視化

2019年12月20日|神戸大学 工学部 市⺠⼯学科 芥川真一
mein_image図-3 ニューデリー(インド)の地下鉄⼯事現場で⼯事の安全性を可視化した例(2010年)

 社会基盤施設を始めとする様々な自然・人口構造物を合理的に監視し、人間環境の安全・安心化を図ることは世界的関心事です。これまでに実施されてきた従来のモニタリング手法では、コスト、人材不足などの理由で「手法や必要な装置は存在するのに、実際にはすべての場所でモニタリングと安全監視を実施することはできない」というジレンマがありました。この点を克服するための新しい方法論として、対象物に生じている変状をその場(On- Site)で可視化(Visualization)する方法が開発されています。 この方法では、周辺状況の安全・危険情報が「光の色として、いつでも誰にでも見えている」という状態を創り上げることができるため、市⺠一人一人の安全を守るための次世代モニタリングシステムとして普及することが期待されています。

図-1 変位の⼤きさによって光の色が変化する光る変位計
図-1 変位の⼤きさによって光の色が変化する光る変位計
図-1 変位の⼤きさによって光の色が変化する光る変位計

図-1 変位の⼤きさによって光の色が変化する光る変位計

図-2 様々なデータ(変位、傾斜、流速など)を可視化するための OSV センサー

図-4 ジャカルタ(インドネシア)の地下鉄⼯事で OSV 技術を利用した安全管理方法を作業員に説明 (このプロジェクトは 2015 年 11 月 30 日の NHK 番組「プロフェッショナル- 仕事の流儀-」で放映)

図-5 神⼾⼤学発の安全性監視技術「On-Site Visualization」の国際的普及活動

 得られた情報を、その場で可視化するというコンセプト"On-Site Visualization"は、これまでに存在しなかった全く新しいものであり、装置のコストダウン化を実現できれば、これまでよりも格段に広範囲のモニタリングが可能となります。また、可視化される安全・危険情報の監視者人数を飛躍的に増⼤させることが可能となるため、様々な形態の異常を早期に発見し、事故を防止できるとともに、人的被害などを最小限に抑えることができる可能性を秘めています。これは、我が国を含めて、まだどの国でも体験したことがない「光に見守られた新しい生活空間」を創造できることを意味するのです。図-1 には最初に開発された光る変位計(土砂災害などの前兆である地盤変位が増⼤する様子を光の色の変化として表現できる装置)、また図-2 には、その後開発されてきた様々な OSV センサーの写真が示されています。

 このプロジェクトを推進するためには、専⾨家と一般市⺠が協⼒することにより「変状の⼤きさ、光の色、その色が示す危険度」についての共通の認識を生み出す必要があります。 社会環境の安全性評価は、これまで専⾨家だけに委ねられていましたが、光を用いるこの手法は、市⺠と一体となってそれを実施してゆく新しい社会システムの構築を迫るものでもあります。また、一般構造物を対象とした場合には「変位」や「傾斜」を計測することが想像されますが、その他にも、科学的に計測可能なすべてのデータを対象とした「光による状態監視システム」を創造することも可能です。さらに、人間環境の安全・安心化を総合的に推進するためには、⼯学だけではなく、自然科学のほとんどの分野、また社会科学やエンタテイメントなどの幅広い分野にこの方法論を適用することも可能であり、「光」を情報伝達の核に置くことの学際的意義は非常に⼤きいと言えます。

 OSV に関する研究開発は、2006 年度に「光を使って安全・危険情報をリアルタイムに原位置に視覚的に表示する」研究として始まり、2010 年 1 月に⺠間会社 18 社が参加する OSV 研究会が設立されました。その後、センサメーカー、測量、自動車制御、建設、コンサルタント、ベンチャー企業、国内外の複数の⼤学、研究機関などの多彩なバックグラウンドを有する 80 以上のメンバー会員からなる研究会となり、神⼾⼤学が中心となって活発な産学連携活動を展開しています。この OSV 産学連携プロジェクトは学生の研究指導から企業との共同研究、研究成果の社会実装(日本国内 100 箇所以上、海外ではフィリピン、インド、インドネシア、ベトナム、シンガポール、ラオスで適用例あり)までを総合的に包含する流れを現実化しており、光る計測装置の開発・改良と社会実装を通じて、人間環境の安全・安心化における新しい概念"On-Site Visualization"を国内的、および国際的に普及させるための活動を展開しています。

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