2011年東北地方太平洋沖地震の津波は東北地方を中心に甚大な被害を与えました。西日本では南海地震の発生が高い確率で予測されています。また、2004年スマトラ島沖地震や2010年チリ・マウレ地震など、津波災害の軽減は世界共通の課題です。津波災害軽減の第一歩は津波という自然現象をきちんと理解し、起こり得る事象を予測できることです。これを目的として、国際的な協力の下、誰でも利用できる高性能な津波計算コードを開発、公開しています。
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JAGURS(図1はロゴマーク)は日本の複数の大学と研究機関およびオーストラリアの研究者の協力で開発されている津波計算コードです。JAGURSは、通常の津波浸水想定に利用されるモデルに加えて、波の分散性と地殻の弾性(津波の荷重によって地球が少したわむ効果)を考慮でき、特に遠地津波の再現性は世界でトップクラスのモデルです。コードはMPIとOpenMPにより並列化されており、PCやワークステーション、スパコンで利用可能です。コードが公開された2015年以降、利用者は世界に広がっています(図2)。
図3は、太平洋の海底に設置された水圧計(DART)で記録された2011年東北地方太平洋沖地震の津波の記録(黒)です。上から、日本近海(21413)、ハワイ付近(51407)、チリ沖(32401)です。合わせて、JAGURSによる計算結果も示しています(赤)。比較しやすいように上下に少しずらしてありますが、観測された津波波形が、高精度かつ長時間、計算で再現できていることがわかります。20時間以上かけて地球の裏側に到達したわずか10cmの津波をこの精度で再現できるのは驚くべきことで、現状、これをできるのはJAGURS以外、他にありません。
津波の高精度予測もさることながら、多くの人に津波という自然現象を理解いただくことが被害軽減の近道です。ご興味あればぜひ使ってみてください。
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