2018年インドネシア・クラカタウ火山島の噴火による津波被害や大阪湾における高潮被害など、世界各地で沿岸災害が頻発しています。そして、その物理メカニズムや被害機構の解明が必要とされています。新潟大学海岸工学研究室では、津波・高潮・高波の機構の解明や温暖化影響評価、海浜変形の現地調査と数値計算、沿岸域現象の水理実験を通して、沿岸域における未来の持続可能な発展に貢献する研究を遂行しています。それらの研究では数値計算モデルや3次元復元技術を用いて、実現象と同じ時空間解析を行っています。
図-2 離岸堤付近で発生する波浪と地形の変化
図-3 将来(2100年)と現在の台風強度(地上風速、気圧)の変化
図-4 DualSPHysicsを用いたコンテナ漂流の数値解析
2018年インドネシア・クラカタウ火山島の噴火により、スンダ海峡沿岸域において津波災害が発生しました。この津波災害は、孤島であるクラカタウ火山の山体崩壊によって引き起こされました。この山体崩壊による津波の発生メカニズムを解明するために、クラカタウ火山島に赴いて、国際共同現地調査を行いました。現地調査では、ドローンに登載されたカメラを用いた写真測量技術を用いることで、直径約2kmで標高130m程度のクラカタウ火山のリアルスケールの3次元地形復元計算に成功しました(図-1)。
この高精度写真測量技術は他の研究課題にも応用しています。例えば、海浜変形の高精度三次元測量をその地形を初期条件として用いた数値計算モデルを用いた波浪と地形変化の解析を行っています(図-2)。土砂輸送にともなう地形変化の数値計算では、台風の通過前後に注目して、高波浪による海浜地形の変化を定量的に評価しています。ここでは、なぜ高波浪によって海浜地形が発生するのかにも注目した基礎的な研究も行っていますが、新潟海岸を対象としたローカルな研究内容ですので、地域社会の社会基盤施設の維持管理への貢献を目的としています。
沿岸域に変化を引き起こす台風は地球温暖化後に強度が増加するとされています。台風は洪水や高潮、高波浪を引き起こして浸水被害をもたらすために、温暖化後に強度が増加する原因を解明することが必要です。これらの研究では、気象モデルや海洋モデルを用いて温暖化後の地球物理場上において、実時間・空間スケールにおける数値計算を行います。このようにして、地球温暖化後に台風の強度が増加する基礎的な理由を解明する研究を行っています(図-3)。
高潮や津波によって沿岸域におけるコンテナなどの漂流物が沿岸災害の被害を拡大させます。例えば、2011年の東日本大震災による津波災害では、津波によって運ばれた瓦礫が被害を拡大させました。さらに、大阪湾の高潮災害では、コンテナが高潮浸水によって漂流しました。研究室では、浸水被害にともなう漂流物の実験的・数値的に再現しています。この研究では、平面水槽におけるコンテナ漂流を3次元的に数値解析しており、カナダとの国際共同研究に発展しました(図-4)。
このように、沿岸災害や沿岸域の物理現象に注目した最先端の研究を国際的にも協力しながら実時空間スケールにおいて行っています。
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