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“分子を篩い分ける膜”で省エネルギーな分離を実現

2025年7月4日|広島大学 工学部 化学工学プログラム
図1 機能性分離膜による分子混合物分離の概略 図1 機能性分離膜による分子混合物分離の概略

地球レベルでの環境負荷が問題となる現在では、持続可能な社会を構築するためにどのような貢献ができるかが重要です。膜分離工学は、化学や医薬などすべての工業プロセスで重要な役割を果たし、水処理やCO2分離のような環境問題の解決においてもキーテクノロジーとなるため、国連が定めた、Sustainable Development Goals(SDGs 持続可能な開発目標)への貢献が大きい技術です。

図2 超薄膜のシリカ分離膜の製膜と断面TEM写真

図2 超薄膜のシリカ分離膜の製膜と断面TEM写真

図3 化学工業プロセスへの膜分離の応用

図3 化学工業プロセスへの膜分離の応用

 分子には固有の大きさがあるため、細孔の孔の大きさが精密に制御された分離膜を用いると種類ごとに分子を篩い分けすることができます。当研究室では、シリカ,チタニア、ジルコニアなどの無機材料、および有機・無機ハイブリッド材料に着目し、製膜・評価技術の確立、透過・分離特性の検討を通じてあらゆる膜分離プロセスについて基礎から実用レベルの研究を行っています。これまでに多孔質材料を分子レベルで構造制御することで、様々なガス分離膜(水素、二酸化炭素、空気、炭化水素)、有機溶媒の脱水、脱塩、ナノろ過膜などの開発に成功しています。

1.よく分け、よく分子を透過させる分離膜開発

 効率よく分子を分ける(分離する)には、細孔径(膜の穴の大きさ)が精密に制御された膜を薄く製膜することが重要です。どのように任意の細孔径に制御するか?どうすれば欠陥なく薄膜にできるか?という問いに対し、ゾル-ゲル法やプラズマCVD法の技術を駆使して、その答えを導き出し、高選択・高透過な膜を追求し続けています。

2.産業ニーズにマッチした膜プロセスの設計・検証

 開発した膜をどのように使用すれば産業プロセスの効率化が図れるかという視点から、膜プロセスの設計を行っています。水素精製や二酸化炭素回収、溶媒濃縮といった膜分離プロセスに加え、反応を促進する膜やエネルギーを回収する膜など新しい膜プロセスの提案も行っています。

3.近未来への貢献

 化学工業では、使用エネルギーの約50%が分離や精製に消費されています。分離・精製方法を改善することで、既存の生産プロセスを大幅に向上させることができます。膜を使った分子混合物(液体や混合ガス)の分離は、熱力学的に省エネルギーかつコンパクトな分離方法であり、膜技術を用いた生産プロセスの抜本的改革を目指しています。

引用文献

H. Nagasawa, T. Kagawa, T. Noborio, M. Kanezashi, A. Ogata, T. Tsuru, J. Am. Chem. Soc., 143: 35-40, 2021.
S. Lawal, H. Nagasawa, T. Tsuru, M. Kanezashi, Mol. Syst. Des. Eng., 7: 1030-1038, 2022.
N. Moriyama, A. Takeyama, T. Yamadoko, K. Sawamura, K. Gonoi, M. Ike, H. Nagasawa, M. Kanezashi, T. Tsuru, Nat. Commun., 14: 7641, 2023.

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