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振動からエネルギーを創り出す新しい発電デバイスの開発と適用検討

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Pict-Labo~写真と動画で科学をのぞく~

硬い材料に微細・複雑な形状を創成する放電加工

2019年4月26日|筑波技術大学 産業技術学部
図1放電加工の例図1放電加工の例

放電加工は、人工的に小さな雷を一秒間に数千~数万回ほど発生させて、材料を少しずつ溶融・蒸発させて、形状を創成する加工です。あまり聞き慣れない加工法だと思いますが、刃物が雷という特徴を持つため、比較的柔らかい材料で硬い材料を加工できます。この特徴を使えば、ピンと張ったワイヤ線で金属を自在にくり抜くことやシャープペンの芯を使って鋼に穴をあけることもできます。また、電気の通らない材料にも、この放電加工が適用できる技術が開発されています。写真(図1)は、鋼より高い硬度を持つ絶縁性の構造用セラミックスに、ワイヤ型の放電加工法によって椅子の形状を創成した例と髪の毛ほどの直径の針(この針も放電加工によって創成)を使って穴をあけた例です。

図2 単発放電痕

図2 単発放電痕

図3 放電の様子
図3 放電の様子

図3 放電の様子

図4 放電中の材料挙動
図4 放電中の材料挙動

図4 放電中の材料挙動

1.加工の跡はクレータ形状

 小さな雷によって加工される側には、雷の跡と同様に図2に示すようなクレータが形成されます。これを繰り返し行うことによって、目的とする形状を形作ります。写真は形状を分かりやすくするため、大きな電流と時間によって形成された例ですが、エネルギーを極限まで絞れば直径をサブミクロンまで小さくすることができます。このような工夫によって、高精度でかつ微細な加工へも対応することができます。放電加工法は電気の通る材料への加工法として知られていますが、冒頭で述べたように電気の通らない材料へも加工ができます。これは、放電により発生する熱によって、クレータの表面を電気の通る材料に改質できる環境を整えることで実現しています。

図2の写真は、公益社団法人 精密工学会からの引用(精密工学会 Precipedia)

2.放電の直接観察

 一発の放電によって、クレータが形成されます。放電はどのように発生しているのでしょうか。観察がしやすいように針電極vs金属板とした状況での放電の様子を図3(動画)に示します。強い発光(プラズマ)発生、時間の経過と伴にプラズマが広がっている様子が観察されます。よく注意して観察すると、プラズマの中から発光した物体が飛び出ていることが分かります。溶けた金属であろうことは予想できますが、放電加工の現象の解明には、このプラズマの中で何が起こっているかを覗く必要があります。

3.プラズマの中の観察

 プラズマの中の観察には、レーザ光を用います。レーザ光は、ある決まった波長の光を出力します。この光を背光として、針電極や飛び出す金属を観察します。観察側には、決まった波長だけを通すフィルターと呼ばれる光学部品を設置します。これによって、様々な波長の光を発光するプラズマの光が遮断され、金属材料の動きのみを観察することができます。観察した結果を図4(動画)に示します。この観察によって、放電中に間欠的なタイミングで金属材料が飛び出していることが分かりました。このタイミングを詳細に解析することによって、材料除去の効率化など放電加工法の発展につなげる研究を進めることができます。

 工学の世界ではまだまだ未知の分野が多くあります。様々な観察系や計測の活用によって、社会に貢献できる研究に興味を持って頂ければと思います。

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