人間の網膜の上にはそれぞれ赤、緑、青の光に対して一番敏感に反応する三種類の視神経細胞がありますが、そのうち一種類でも異常があると、色を区別しにくくなり、生活にいろいろな支障をきたすようになります。例えば、モネの「サンセット」にある夕陽が見えない、赤色の生肉と焼けている肉の区別がつかないといった状況が生じてしまうのです。このような日常の場面で助けになるのが計算メガネです。計算メガネは農業の助けにもなります。
人間は、目に見える映像を脳内で処理して、仕事や日常生活でさまざまな判断を行っています。近年、「深層学習」とよばれる新世代の人工知能(Artifitial Intelligence:AI)技術が人間のもつ高度な映像処理機能を実現しつつあります。また、拡張現実(Augmented Reality:AR)とよばれる技術では、現実世界の対象物に対して、メガネ型ディスプレイ(スマートグラス)を用いてさまざまな情報を重畳表示させることにより、現実世界を拡張させることが可能です。この二種類の技術、AIとARを掛け合わせることによって登場したのが計算メガネです。
計算メガネをかけて肉を焼くと、スマートグラスのカメラで撮影した画像が計算サーバに送られ、事前に学習した深層ニューラルネットワークモデルが画像中の肉を検出し、その焼き具合が推定するので、その結果がスマートグラスに可視化されます。
一方、農業支援では、ベテラン農家のノウハウをAIで学習し、作業の状況に合わせてスマートグラスに適切な指示を表示させることで、誰でも難しい作業ができるようになります。例えば、ブドウ栽培において、粒数が目標数になるまで不必要な粒を取り除き房の形を整える「摘粒作業」が美味しいぶどうを作るうえでとても重要なのですが、長年の経験を必要とします。また、短期間で作業を済ませる必要があるため、摘粒作業は生産拡大のボトルネックになっています。計算メガネをかけて作業すれば、AIが映像を処理し、現在の粒数を自動的に計測してスマートグラスに表示してくれます。また、どの粒を摘むべきかも自動で特定し色で可視化してくれます。この計算メガネさえあれば、アルバイトさんもベテランと同じぐらい甘いぶどうを簡単に作れるのです!
※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。