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非侵襲的マイクロプラズマによる薬剤の経皮吸収への挑戦

2023年11月17日|静岡大学 大学院総合科学技術研究科工学専攻 清水一男
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皮膚や細胞に害のない非侵襲的マイクロプラズマを照射することで皮膚や細胞膜を構成する脂質成分(これが体や細胞内を守るバリア機能を果たしています)を一時的に緩める効果により注射による薬剤の投与ではなく、痛みの無い経皮吸収を促進します。我々の研究室では、これにより注射針の無い世界を目指しているのです。

 生体に対する薬剤投与において一般的には、経口投与法や直接投与法がある。経口投与法は、薬物を比較的容易に摂取可能である利点がある反面、薬物による胃腸障害や小腸、肝臓での初回通過効果による薬剤の移行量減少などがある。しかしがんワクチンなどで知られる抗体医薬はその分子量が150 kDa程度と大きいため、経口投与は不可能である。そのため、急速静注・点滴による体内への直接投与を行わざるを得ないが、アドヒアランスが招く患者のQOL(生活の質)低下が問題となっている。

 我々は、この問題を解決するため非侵襲的マイクロプラズマを用いることで高分子薬剤を細胞内に取り込ませ、細胞製剤として体内にその細胞を投与する事で、非侵襲的な方法で的確な箇所に高分子薬剤を投与することを検討している。

 その際、問題となるのが脂質を有する細胞膜である。皮膚には角質層というバリア機能があるが、細胞膜も同じく脂質を有することで、細胞内部と外部を仕切る構造体として、機能しており、これが細胞内部を守るバリアの役割を果たしている。細胞膜には、外部から細胞内へ様々な物質を選択的に取り込む機能があるが、抗体医薬のような巨大な分子量を持つ薬剤類は通常、透過出来ない。非侵襲的マイクロプラズマを照射することで細胞膜や皮膚表面の角質層内の脂質二重層の相変位を発現させ、抗体医薬のような巨大分子を取り込むことが可能となる。今回、紹介する写真は、特殊な蛍光試薬を用いることで非侵襲的マイクロプラズマ照射前後の細胞膜の脂質成分の変化を示すものである。

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