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夜の明るさから分かる意外なこと

2023年1月20日|金沢大学 理工学域地球社会基盤学類
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地球の周りの宇宙空間には、多数の人工衛星が飛んでいます。みなさんにとって身近なのは、衛星放送や気象観測に利用されるものかもしれません。実はそれ以外にも、地表の温度や植生、水分量を観測する衛星が多数あります。そのデータは地球環境のモニタリングなど様々な分野に応用されています。今回は、特に夜間の明るさ(以下では「夜間光」と呼びます)を観測したデータを利用した研究を紹介します。

 人工衛星から地球を観測するメリットはなんでしょうか。代表的なメリットのひとつは、地上から到達するのが困難なエリア(たとえば険しい山岳地帯や海上)であっても、また、十分な統計データが揃っていない発展途上国であっても、平地や先進国と同じような精度のデータが得られることです。

 私たちの研究グループは、発展途上国の貨物量の推計に興味を持っています。アフリカの国を例に説明すると、それぞれの港での品目別出荷量の情報は得られるものの、それらの貨物がどの国のどの地域で生産されたものかは不明なことが少なくありません。すると、発展著しい各国のどのエリアでどのような品目の生産が増大しているかや、生産地から港までどのような経路で運ばれているかなども不明となります。これらは、内陸国が出荷のための港をどの隣接国に設定するか、国境や輸送経路上の治安や道路整備の状況は十分か、といったSDGsに関連する課題にも繋がっていきます。

 ここで夜間光のデータを用いると、以下のことが期待できます。まず、夜間光は毎日のように観測できるので、工場の建設などによる生産力の向上がデータにすぐに反映されます。また、夜間光の強さはエリアごとの人口や生産高ともなんらかの関係を有していると想定されます。つまり、人口や生産高のデータが得られなくても、夜間光のデータだけから貨物量の予測が行えるかもしれません。

 そこでまずは、日本において、夜間光データを利用して都道府県別の貨物量の推計を行いました。日本では、実際の都道府県別貨物量の値がデータとして存在するので、推計の精度を評価することができるわけです。我々が構築・推定した都道府県別の貨物量を予測するモデルは、ひとつの驚くべき結果を示しました(図)。それは、都道府県の人口(図中の青線)や生産高(緑線)のデータよりも、衛星による都道府県別の夜光間のデータ(赤線)のほうが、貨物量の予測に高く寄与することです。この結果は、世界どこでも均質に取得できる衛星データの高い利用可能性を示唆しています。

参考文献および写真・図の出典: Kawasaki, T., Nakanishi, W., Hyodo, S., Namba, Y., Mori, H., Kishi, H.: Applicability of nighttime light satellite imagery data for freight generation/attraction estimation: Case study in Japan, Communications in Transportation Research, Vol.2, 100067, 2022.

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