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Pict-Labo~写真と動画で科学をのぞく~

「気泡」から始めた熱流体工学

2024年10月4日|群馬大学 熱および物質移動
図1 単一気泡の膨張挙動(動画)

 私たちの身近にある液体には多くの場合「気泡」が存在しています。しかし、私たちの生活の中で「気泡」に注目することは多くはありません。気泡は周囲の圧力変化により大きさが変化し、また変形をともなうこともあります。また気泡と液体との界面では相変化やガス移動が生じることもあります。気泡の運動には輸送現象や自由表面など多くの「物理」が関連しています。これらは「熱移動」の理解にも役立ちます。このように気泡の運動をきっかけに、「熱流体」にみられる輸送現象を解き明かすことを目指しています。

図2 翼モデルから発生したキャビテーション(動画)

図3 気泡の崩壊挙動(動画)

 液体中にある気泡は、流体機械の性能低下を引き起こす要因になることがあります。例えば水中でプロペラが高速に回転すると、プロペラからキャビテーションが発生します。キャビテーションはプロペラの回転により液体の圧力が低下することで液体中に気泡が生じる現象です。水道の蛇口をひねった時に、蛇口から「シュー」と言う音が発せられていることを聞いたことがあると思います。この音も蛇口にあるバルブにキャビテーションが発生していることが原因です。このように、気泡は音を発したり、また気泡が崩壊する際には強い圧力が発生することが知られています。この強い圧力は物体表面に損傷を与えることもあり、流体機械では大きな問題となります。

 キャビテーションによって発生した気泡の成長や崩壊運動には気液界面での蒸発/凝縮が大きく影響します。場合によっては気泡の運動にガスの析出/溶解をともなう場合があります。つまり、気泡の運動には「熱」や「物質」の移動現象が強く影響することが理解できると思います。

 気泡の運動は、機械工学だけでなく様々な分野で問題となることがあります。身近な例としては体内を流れる血液中に気泡が発生し、発生した気泡が血流を妨げ様々な症状を引き起こすことが知られています。この現象には、血液中に溶解している不活性ガスの析出が大きく影響しています。この原因を探るために、「機械工学」で行われている実験、計測、数値シミュレーションが大いに役立ちます。

 普段見慣れている「泡」にも様々な現象が含まれており、気泡の運動を知ることをきっかけとして様々な「熱・物質輸送」現象を研究対象としています。熱輸送に注目すると、加熱物体からの放熱について調べています。物体の温度が物体周囲の流体と温度差がある場合、熱は高い方向から低い方に移動し、その移動には物体周囲の流体の流動に影響されます。熱の移動を解き明かすためには、流体の運動も調べる必要があります。

 私は気泡の運動解析を発端として、研究課題を機械工学に限定することなく「移動現象」をキーワードに様々な分野の研究課題に取り組んでいます。

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