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脳機能の解明に向けたLED開発

2024年8月30日|豊橋技術科学大学 集積電子システム分野
図1.生体深部に刺入できる針型LEDデバイス 図1.生体深部に刺入できる針型LEDデバイス

私たちの身近にある電球、蛍光灯はすっかりLEDライトに変わり、LEDは私たちの生活を支える身近なものになりました。最近、「マイクロLED」と呼ばれる従来のLEDの1/10以下の小さなLEDの集積化技術が注目されており、高輝度・高精細なディスプレイ応用や安心安全の観点から自動車の照明や表示機、スマート繊維への応用、空間光通信(Li-Fi)やプラスチックファイバーを用いた光伝送、水中での通信技術への応用、バイオアプリケーションといった幅広い分野への活用が期待されています。

図2.脳に密着して貼り付けられるLEDフィルム

図2.脳に密着して貼り付けられるLEDフィルム

 私たちが注目しているのは光遺伝学分野に用いるためのマイクロLEDの開発です。オプトジェネティクスとは、遺伝子の導入技術によって特定の神経細胞を光で選択的に操作できる技術のことです。近年は、生体に光を照射して神経細胞の活動を制御することが可能になっています。私たちの研究室では、マイクロLEDを集積させて生体の中に埋め込み、脳内に広がる特定部位や複数の神経活動を制御できる新しい光照射ツールの実現を目指しています。

 脳がもつ学習、記憶、思考、知覚といった高度な情報処理機能は複雑に絡み合う神経ネットワークのはたらきによるものであることが知られています。この仕組みを理解するためには、特定の神経活動を制御して、脳内に広がる神経細胞の活動を計測することが必要です。これまで、脳の神経活動の制御には薬や電気による刺激が行われてきましたが、薬は次の刺激を与える時に前の薬が抜ける必要がありますし、電気の場合は刺激したい場所以外にも影響を与える課題がありました。光の場合は特定の場所へのON/OFFが簡単にできるため、正確に刺激する場所と脳活動の関係を調べることができます。生命科学分野では、光で神経活動を制御できる光遺伝学手法が広く使われ、多点で自在に神経細胞を光照射できるデバイスが求められており、このような用途に利用できるマイクロLEDデバイスの開発を進めています。生体組織の深部にアプローチするため、図1に示す生体に刺入できる細い針構造をもつ刺入型マイクロLEDデバイス・神経電極プローブの開発のほか、図2に示す広範囲に分布する神経細胞に光照射するために組織に密着して貼り付けられるフレキシブルなマイクロLEDフィルムの開発など、様々な形状のマイクロLEDデバイスの開発を進めています。また、生体活動の制御だけでなく同時に神経活動を観察することも求められますので、最近は脳波計測デバイスの開発を進めており、マウスの脳に埋め込んで多感覚情報を同時に取得することにも成功しています。これらのデバイスを融合・集積して、マルチモーダルな生体活動の操作・計測デバイスの創出を目指して研究を進めています。

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