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グラフェン被覆アルミニウム粉末を用いた高熱伝導焼結合金の開発

2023年1月27日|宇都宮大学 マイクロ・ナノ工学
mein_image図1 透過型電子顕微鏡による酸化グラフェン

新素材であるグラフェンは、炭素原子が六角形のハチの巣状に結合したシート状物質であり、平面内の強度は最強、また熱伝導率は5000W/Kmにもおよび、アルミニウム合金の熱伝導率(120-200W/Km)を大きく上回ります。このグラフェンを、アルミニウム合金中に立体的に配置し、熱を伝えるネットワークを構築することで、300W/Kmを越える高熱伝導構造用材料の開発を目指しております。用途として、エンジンの軸受け材料や電気モーター、バッテリーの冷却部材、電子部品等への活用が期待されてます。

図2 酸化グラフェンで被覆したアルミ粉末を焼結して得られる高熱伝導アルミ合金のプロセス

図3 オージェ分光分析によるアルミニウム粉末の元素マッピング
図3 オージェ分光分析によるアルミニウム粉末の元素マッピング
図3 オージェ分光分析によるアルミニウム粉末の元素マッピング
図3 オージェ分光分析によるアルミニウム粉末の元素マッピング
図3 オージェ分光分析によるアルミニウム粉末の元素マッピング

図3 オージェ分光分析によるアルミニウム粉末の元素マッピング

 グラフェンを安価に得る方法として、硫酸と過マンガン酸に黒鉛を混ぜ、超音波振動をかけることにより、酸化した数層の酸化グラフェン(Graphene Oxide, GO)を得る方法があります(図1)。大きさは約2μm、厚みは約10nmと非常に薄い、”ふろしき”のような膜です。膜がよれた部分は原子濃度が高くなるため黒く見えます。酸化の過程で多数の官能基が形成されるため、水に容易に分散します。この酸化グラフェンを分散した水に、平均粒径約10μmのアルミニウム粉末を混ぜて攪拌すると、真っ黒だった分散水は、約30分程度で透明になります(図2中央)。これは、水の中に分散していた酸化グラフェンが、アルミニウム粒子の表面に静電引力で付着するためです。

 グラフェンがどの程度、アルミニウムの表面を被覆しているかが合金の熱伝導性に大きく影響します。しかし10μmのアルミニウム粉末上にある、数十nmしかない極薄のグラフェン層を識別するのは困難でした。ここでは表層数nmの元素分布を調べるのに有効なオージェ分光による分析結果を図3に示します。赤のアルミニウム、緑の炭素(グラフェン)、青の酸素の分布が示されており、アルミニウムと酸素の重なった紫のアルミナを避けるようにグラフェンが分布し、約70%の被覆率であることが分かりました。また被覆する際に、アルミニウムの表面で、アルミニウムの強力な酸化還元作用により、熱伝導率の高いグラフェンに変態することもわかっております。この粉末を圧粉して焼結することで、アルミニウム粉末の表面に分布していたグラフェンは連結し、アルミニウム合金中にネットワーク構造を形成します。

 このような従来にない新たな合金の創出のためには、機械工学の知識に加え、金属材料や化学、電気・電子の知識が必要である他、材料メーカーや外部の分析機関の協力を得る事も不可欠です。これらの連携を通じた解析により、現象を正確に把握することで、高熱伝導化に向けた設計の筋道が徐々に明らかになるでしょう。

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