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Pict-Labo~写真と動画で科学をのぞく~

準結晶の原子配列

2016年12月05日|秋田大学 理工学部

自然界では、桜の花弁のように随所で5回対称性を見ることができる。5回対称性とは、正5角形と同じように、72度回転しても元の図形と区別できない性質である。物質を構成する原子もまた、全体として5回対称性を保って配列する場合がある。「準結晶」とは、原子が普通の結晶にはありえない5回対称性をもって規則正しく並んだ物質で、まるで夜空に輝く花火のような美しさを物質中に見てとることができる。

どうやって撮影するの?

 この写真の撮影条件には電子顕微鏡を用いている。電子顕微鏡とは、光ではなく代わりに電子を光源に用いた特殊な顕微鏡で、物質の中の原子配列のような1ナノメートル以下といった極めて小さいものも拡大して観察することができる。

 この写真は、アルミニウムとコバルト、ニッケルをある割合で混合した合金材料を100ナノメートルの薄さまで削って撮影したものである。真空中でこの材料に電子線を照射すると、原子の種類や並び方に応じて電子が散乱される。材料中を通り抜け散乱された電子は、材料内部の原子配列の情報をもっており、材料が100ナノメートル程度薄ければ外に飛び出してくる。この電子をかき集めることで結像した準結晶の原子配列写真は、普通の結晶には見られない正5角形と同じ対称性をもった美しい幾何学模様を示している。

 写真に見える点ひとつひとつが原子を表しており、原子と原子の間の距離は約0.2ナノメートルである。随所に様々な大きさの5角形を見てとることができ、全体として5回対称性をもっている。

 このような準結晶の原子配列をもつ物質は数多く存在し、幾何学的に美しいだけでなく、結晶物質とは異なる新しい特性が現れる可能性を秘めており、物質科学では極めて重要な研究対象となっている。2011年にはこの準結晶物質の発見によりイスラエルのD.シェヒトマン博士にノーベル化学賞が授与され、俄然研究者の注目を集めている。

撮影に使用したもの

  • 電子顕微鏡(Jeol JEM-ARM200F)
  • Al-Ni-Co準結晶合金

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