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イメージセンサを用いた可視光通信

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私達が持つ繊細な指先の感覚を可視化する「ナノ触覚センサ」

2022年5月27日|香川大学 創造工学部 創造工学科 機械システムコース
mein_image図1 指先を模倣したナノ触覚センサチップの全体構造

私達の指先は、触れる対象の硬さや滑りやすさ、表面の滑らかさなど、様々な触覚の質感を敏感に感じ取れます。この指先が持つ感覚を科学技術でセンシングするため、半導体技術を応用して全く新しいコンセプトの触覚センサを開発しました。生物が細胞の機能的集合体から構成されているように、半導体技術で様々な機能と構造を高密度に集積し、指先の様に繊細な触覚機能を高感度のセンサとして実現することが可能です。ここでは私達の指先が感じ取ることのできるナノレベルの凹凸や摩擦、柔らかさの変化を可視化する「ナノ触覚センサ」を紹介します。

図2 微細な指紋構造とバネ構造の顕微鏡写真

図3 髪の毛表面の光学顕微鏡写真

図4 ナノ触覚センサによる髪の毛表面の計測例(なぞる方向の違いを比較)

 自分と同じ指紋を持つ人は世界中探しても見つからないといわれます。しかし、触覚における指紋の役割は私達全員とも同じです。指先には圧力や滑る際の摩擦振動、柔らかさや温度の違い等を敏感に感じ取る様々な神経細胞(受容器)が高密度に分布します。それらが脳に送る電気信号(パルス)の特徴から「手触り感」の微妙な違いを見分けていると考えられています。その時、指紋は対象と直接触れ合い、刺激を受ける「触覚の入り口」となります。よって、指先においては皮膚の振動や変形などの機械刺激を受ける「指紋構造」と、刺激に応答して電気パルスに変換する「受容器(神経)網」が協調して働いているのです。

 最新の半導体微細加工技術を用いれば、指紋の様にしなやかに変形する「機械構造」と、受容器の様に触覚刺激を捉える「センサ回路」を実際の指紋とほぼ同じサイズの0.5mm間隔に並べて形成できます。このアイデアを具体化した指先型の触覚センサが私たちの「ナノ触覚センサ」(図1)です。「指紋」の役割を持つ6つの微小構造が皮膚と同じ硬さを持つ半導体のバネ構造で支えられ、指先の皮膚と近い柔らかさで対象に触れます。指紋の構造を支える半導体バネの上には、対象から受ける微細な凹凸や摩擦力、堅さに応じて変化する様々な触覚刺激を感じるセンサ集積回路が通っています。

 図2はナノ触覚センサが持つ微細構造の顕微鏡写真です。指紋構造が持つ先端の丸みは、本物の指紋と近い曲率で形成しています。また、6つの指紋で緩やかな曲面を形成しており、これが指先の丸みと近い曲率を描いています。それぞれの指紋を支える半導体バネ構造は、最も細い部分で幅13ミクロンです。その表面に神経となるセンサ回路が通っています。指紋が計測対象表面をなぞるとバネ上の回路が変形して歪みが生じ、指紋の動きを忠実に反映した電気信号を出力します。この回路は人間の指先が感じ取れないほど小さな刺激を捉える感度があるため、条件によっては指先以上に正確な手触り感を知ることできるのです。

 最後にナノ触覚センサで見ることができる質感の世界を1つ紹介します。図3は髪の毛の光学顕微鏡写真です。私たちの指先で髪の毛を「毛先方向」と「根本方向」になぞっても「毛先になぞる方が滑らか?」と感じる程度です。一方、ナノ触覚センサでは「毛先方向」と「根本方向」の違いが非常に明確に分かります(図4)。厚さ0.2ミクロン前後の薄いキューティクルを正確に数えられるとともに、根元に向かう場合はキューティクルの捲れが摩擦を強くする様子まで判ってしまいます。ナノ触覚センサは指先以上に正確な「手触り」を感じ取る新しい技術です。各種製品や素材が持つ触感や皮膚の健康状態を数値化したり、触覚を持つ先進医療機器の開発に応用されたりするなど、多くの分野で応用研究が進められています。

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