ナノテクノロジーを支える重要な顕微観察手法の一つとして走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope: SPM)がある。SPMは微細なプローブで試料表面を”なぞる”ことで表面の状態を計測できる。SPMは今日、観察手段のみでなく、微細加工などマニピュレーション手段としても盛んに用いられている。動画は走査型電子顕微鏡とSPMマニピュレータの複合化装置である。電子顕微鏡でミクロな試料を観察しながら力覚制御装置を用いてSPMプローブが検出するナノスケールの凹凸形状を指で感じながら試料を操作(計測・移動・加工など)することができる。
図1
図2
開発したSPM型マニピュレータ(図1)はコンパクトサイズであり、電子顕微鏡試料台への搭載が可能である。プローブは試料表面に接触するとプローブに組み込まれたひずみ抵抗センサーにより、ナノニュートンという微弱な力を検出することができる。プローブの高精度な位置決めユニットにより、電子顕微鏡で観察しながら正確にプローブ先端を任意の位置に接触させ、表面状態の測定や微細加工が可能である。
SPMマニピュレータを用いて顕微解剖や微細加工などを行う場合、通常は複雑な装置操作が要求される。我々はオペレータが容易に操作できるようにヒューマンインターフェイスとしてハプティックデバイス(力覚デバイス)を用いた制御システムを開発した。これによりマニピュレータのプローブが検出した微弱な力信号をハプティックデバイスのハンドルを介してオペレータは指先に感じることができ、ミクロな試料の表面凹凸情報を把握できる。(図2参照)
動画の右側は本装置を用いてHeLa 細胞 (ヒト子宮頸癌細胞培養株)の表面を微細加工した例である。ハプティックデバイスのハンドルを押しこむことで試料に対して強い加重を印加でき、同時に表面からの力応答信号を指先に感じながらスクラッチ加工した。このように表面微細加工やバイオ試料の顕微解剖技術として本装置が有効であることがわかる。
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