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粉体の世界―「流体でも固体でもない」物質の力学―

2026年1月23日|東京農工大学 工学部 機械システム工学科 准教授 高田智史
画像1 粉体の運動を粒子シミュレーションによって計算し、可視化した例。

砂や粉、小さな粒子の集まりである「粉体」は、時には流れ、時には固まる、不思議な物質です。コーヒー豆などの身近なものから工業プロセス、果ては惑星探査に至るまで、粉体はさまざまな場面で重要な役割を果たしています。しかし、その振る舞いは非常に複雑で、簡単には理解できません。そのような対象に対して、どのような振る舞いをするか、それをどう記述すればよいか、ということを研究しています。

動画1 出口が狭い場合に詰まりが発生する様子。

動画2 出口が十分に大きい場合にほぼ一様に流れる様子。

動画3 粒子一つ一つの運動を計算する粒子シミュレーションの例。

動画3 粒子一つ一つの運動を計算する粒子シミュレーションの例。

動画4 粉体中にある物体を一定の力で引っ張った際のシミュレーション。周囲の粒子との摩擦により、次第に動かなくなる。

動画4 粉体中にある物体を一定の力で引っ張った際のシミュレーション。周囲の粒子との摩擦により、次第に動かなくなる。

動画5 粉体層に物体が衝突した際のシミュレーション。衝突により粒子が飛び散り、クレーターが形成される。

粉体とは?

 粉体とは、砂や粉のように多数の粒子からなる物質の総称です。粉体は、流体のように流れることもあれば、固体のように力を支えることもあり、「流体でも固体でもない」性質を示します。このような振る舞いこそが、粉体を理解する上での難しさであり、同時に大きな魅力でもあります。

粉体の特徴

 粉体の特徴の一つとして、粒子の大きさが無視できないという点が挙げられます。このため、容器の出口が狭い場合には、粒子同士が支え合って流れが止まり、詰まりが発生します(動画1)。一方、出口がある程度以上の大きさになると、粉体はほぼ一様に流れ落ちるようになります(動画2)。

 しかし、この場合においても内部の粒子の動きを詳しく観察すると、常に滑らかに流れているわけではなく、粒子が動いたり止まったりを繰り返していることが分かります。見た目には安定した流れに見えても、内部では不均一で複雑な運動が生じているのです。

粒子シミュレーションによる観察

 これらの現象を理解するためには、従来は実験が主な手法として用いられてきました。しかし、ここ数十年の計算機性能の向上により、数値シミュレーションを用いて「数値的に実験」を行うことも可能になっています(動画3)。

 粒子シミュレーションでは、粉体を構成するすべての粒子について運動方程式を解き、粒子の位置や速度の時間変化を計算します。これにより、実験では直接観察することが難しい粉体内部の運動や力の伝わり方を可視化することができます。

シミュレーションの例

 ここでは、粒子シミュレーションによって得られたいくつかの例を紹介します。動画4は、粉体粒子の中に置かれた一つの大きな粒子を、一定の力で右方向に引っ張った際のシミュレーション結果です。最初は周囲の粒子を押しのけながら動くことができますが、次第に粒子同士の摩擦による抵抗が増大し、最終的には動かなくなります。

 また、動画5は粉体の集まりに物体が衝突した際の様子を示しています。衝突によって衝突点近傍の粒子が飛び散り、粉体表面にクレーターが形成されることが分かります。

粉体を知ることで広がる世界

 このように、粉体の振る舞いを理解することは、粉体を扱う産業への応用にとどまらず、地盤現象や惑星表面の解析など、自然現象や宇宙科学の解明にもつながると期待されています。

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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