近年、ミリ波帯の電磁波は、車載レーダーやスマートフォンでの利用が進み、私たちの生活に欠かせない存在ですが、ミリ波は天文観測でも用いられ、宇宙の成り立ちの謎を解くための観測が行われています。天文観測用の電波望遠鏡は、宇宙を調べるための重要な“目”として使われてきました。生まれたての星の周りにはガスや塵が多く、可視光では奥が見通せないことがありますが、ミリ波は隠された宇宙の姿まで映し出すことができます。通信から宇宙の謎の解明まで、ミリ波技術は人類の新しい地平を切り開いています。
画像2:国立天文台野辺山宇宙電波観測所に設置されている45m電波望遠鏡
動画1:『45m電波望遠鏡の謎』(国立天文台作成)
私たちのまわりでは、歩行者や障害物を見分ける車載レーダーや、スマートフォンの大容量通信など、ミリ波帯の電磁波の利用が急速に進んでいます。電波としての便利な性質を持ちながら多くの情報を扱えるため、その技術はますます注目されています。
ミリ波の活躍は生活の中でだけにはとどまらず、天文観測でも用いられています。実は天文学では、半世紀以上前から宇宙の観測に不可欠な手段としてミリ波を扱い、先端技術を切り開いてきました。天文観測用の電波望遠鏡は、宇宙を調べるための重要な“目”として使われ、人間の目では見えない星や惑星が生まれる現場をとらえることができます。
図1は、「はくちょう座X領域巨大分子雲」と呼ばれる、今まさに大量の星をつくっている領域をミリ波で描いた画像です。観測に使われたのは、国立天文台野辺山宇宙電波観測所で運用されている、世界最大級の主鏡直径を持つ45m電波望遠鏡(図2・動画1)で、一酸化炭素分子が放射する波長約2.6ミリメートルの電波です。異なる密度構造をとらえる放射性同位体分子の放射をカラーで表現することで、ガスがどのように分布し、どれくらいの濃さで集まっているのかがわかります。この雲のように星間空間に分布するガスの塊は、全体では太陽数百万個に相当する質量があると考えられ、特に明るい部分では何百もの若い星が今まさに生まれようとしており、星間空間に広がる“星のゆりかご” とも呼ばれています。
工学と天文学を結ぶ天文観測装置の開発は、アイデアをすぐに応用に結び付けることができることが魅力です。北見工業大学では、星や銀河、そして宇宙そのものの誕生と進化に迫る研究を支えるため、ミリ波に加えて、次世代通信技術でも利用が期待されるテラヘルツ波も含む、新たな受信機開発にも取り組んでいます。超電導デバイスや電磁界解析、データサイエンスなど、多様な技術を活かして観測装置を開発し、宇宙の謎を解き明かす研究を進めています。
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