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ミスフィット型層状酸化物の走査透過型電子顕微鏡観察

2023年9月29日|長崎大学 結晶物理学研究室
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走査透過型電子顕微鏡は入射電子ビームを1原子以下の大きさに絞り、捜査しながら透過電子像、散乱電子線、特性X線を検出し、1Å以下の分解能で試料を観察することができる顕微鏡です。ミスフィット型層状酸化物Ca3-xSrxCo4O9のSr占有サイトを決定するために、JEOL JEM-ARM200Fを用いて観察を行いました。 Ca-K線とSr-L線の最大強度位置が一致するので、Srは岩塩層のCaサイトに置換されていることが分かりました。

 ミスフィット型層状酸化物Ca3Co4O9は熱電変換材料として期待されています。この材料に、重い元素であるSrを添加物として加えると、熱電変換効率が著しく向上することが実験的にわかっています。このとき、Srがどの原子と置き換わるかを調べることは非常に重要となります。

 左側の6つの図は、 HAADF-STEM像 、Ca3Co4O9結晶投影図、特性X線(O-K線、Co-K線、Ca-K線、Sr-L線)により結像したEDX-STEM像を示しています。ミスフィット型層状酸化物は、結晶投影図に示すように、各原子が規則正しく並んでおり、また、岩塩層とCoO2層とよばれる2種類の原子層から構成されています。HAADF-STEM像では、原子のある位置が明るく線状に観察でき、重い原子ほど明るく観察できます。特性X線により結像したEDX-STEM像では、O、Co、Ca、Sr各原子の位置が明るく線状に、原子種を区別して観察することができます。EDX-STEM像からは、結晶投影図に示された位置に、各原子が存在することがわかります。各元素のEDX-STEM像の強度を縦方向に積分し、横方向の強度分布を示したのが、右図です。 O、Co、Caの特性X線強度のピーク位置は、結晶投影図で予想される各原子位置に一致しています。Srのピーク位置はCaの原子位置に一致しており、Sr原子がCa原子と置き換わるということがこの実験から明らかになりました。

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