アルミニウムは、航空機、新幹線、アルミニウム缶、放熱材、建築用サッシなど、多くの製品に使用されています。材料の優れた特性(熱・電気伝導性、低比重、良加工性、耐食性、高リサイクル性)により、アルミニウムは産業界において無くてはならない存在です。製品になる前の段階では、アルミニウム製品素材(角板や円板、管、棒、線など)が生産され、これらの基本形状を持つ製品素材は、生産工程においてローラによる接触搬送が一般的です。
一方、磁気浮上技術は、磁気の力によって物体を非接触で支持することが可能です。このうち、アルミニウムに電磁力を作用させる方法として「交流誘導式」があります。これは、交流磁束をアルミニウムに鎖交させることで、アルミニウムには電磁力(誘導反発)と渦電流によるジュール熱が発生し、このうちジュール熱を有効利用したものは誘導加熱(IH)として広く知られています。この交流誘導式をアルミニウム製品素材の浮上搬送に利用する場合、ジュール熱は浮上力低下の原因となるため好ましくありません。そこで新たに「交流アンペール式」が提案されました。この提案方式は、アルミニウム内部の渦電流の状態を知ったうえで、渦電流に同期した磁束を上手く作用させることで電磁力を追加することができます。この効果により、同じものを浮上させようとしたとき、より大きな浮上力を発生させることができますし、同じ浮上力が必要なときに、アルミニウムでのジュール熱を軽減することも可能となります。磁気浮上技術の非接触支持という大きな利点をアルミニウム製品素材の生産工程に適用できれば、摩擦摩耗レス、表面キズレス、摩擦帯電レスといった高品質化に向けた新しい搬送技術が生まれます。
永久磁石が鉄を引き付けることは周知の事実です。アルミニウムに対してはどうでしょうか?永久磁石をすばやく動かせば、アルミニウムに力が働きます。例えば1円玉に永久磁石を載せて、永久磁石をすばやく引き上げれば、瞬間的に1円玉は浮き上がります。では、アルミニウムに力を発生させて常時引き上げるにはどうすればよいでしょうか?永久磁石のかわりに電磁石を用いて交流磁界を発生させても、反発力しか発生しないためうまくいきません。
ここで交流アンペール式を利用します。電磁石(EM1, EM2)を適切に配置し、EM1によってアルミニウムに渦電流を発生させます。さらに渦電流の位相と側方電磁石(EM2)の位相を調整することで電磁力を発生させます。つまり、発生する電磁力の総和がアルミニウムの質量より大きければ「常時引き上げる」ことが可能となります。
産業用ロボット(多関節、パラレルリンク等)のように、物体を上から把持する(引き上げる)といった動作が可能となりました。この技術をさらに発展させて、電磁力によるアルミニウムの非接触把持システムの確立を目指しています。
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