高分子材料は、プラスチックや繊維、ゴムなど、身の回りのさまざまな製品に使われており、日常生活に欠かせない材料の一つです。高分子材料は、大きく「結晶性」と「非晶性」に分けられます。
結晶性高分子では、分子鎖が折りたたまった結晶ラメラから成り、ナノメートルからマイクロメートルスケールにわたる階層的な高次構造が形成されます。マイクロメートルサイズの構造を「球晶(きゅうしょう)」と呼び、結晶ラメラが中心から放射状に広がるように成長する特徴的な構造をしています。
球晶成長の様子は、結晶化温度における等温結晶化過程で観測できます。ここでは、植物を原料として作られ、環境に優しい高分子材料として知られるポリ乳酸(PLA; polylactic acid)の球晶が成長していく様子を偏光顕微鏡で観察した映像を紹介します。
ある特定の方向に振動しながら進行する光のことを偏光と呼びます。偏光顕微鏡の2枚の偏光板を直交させた状態で観察してみると、高分子の球晶に特徴的な十字のパターンであるマルテーゼクロスが観測できます。
結晶ラメラが放射状に成長する球晶構造では、分子鎖の向きに応じて、光の屈折する方向が異なります。観察の際に鋭敏色板という光学素子を使うことで、球晶中における光の屈折する方向に応じて青と黄の色を呈した球晶を観ることができます。
PLAの球晶成長の様子は、PLAを溶融させたのちに、結晶化温度において一定温度で一定時間、保持することで観測しました。
身の回りの製品の材料として使用されるものは固体で、使用するうえで変形や衝撃に耐えられる強さが求められます。球晶をはじめとする高次構造を制御することは、高分子固体の強さを制御するうえでとても重要です。高分子材料は比較的新しい材料であり、広く社会に普及する一方で、多くの未知の課題が残されています。その解明は、より優れた材料開発につながるだけでなく、学術的な理解にもつながります。
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