
周辺に存在する未活用のエネルギーを利用し、発電を行うエネルギー・ハーベスティング(環境発電)は、DX(Digital Transformation)化と省エネルギー化を推進するための重要技術に位置付けられています。その中でも、エネルギー密度が高く、昼夜を問わず利用可能な振動による発電が注目されつつあります。振動発電デバイスにより、機械やモビリティ、人や動物に使用するセンサの電池レス化や配線フリー化が可能になり、IoT(Internet of Things)技術が拡大し、新たな未来社会のデザインが可能になります。また、高効率な発電デバイスは、機械や構造物、更に波などの自然界からの振動エネルギーの回収を可能にさせ、省エネルギー化に貢献します。本研究室では、高効率・高出力・低コスト・耐久性・拡張性に優れる新たな発電デバイスを開発しています。
振動発電には、圧電式や磁歪式があります。しかしながら、これまで、圧電式では振動板に割れやすいセラミックを使用するため、耐久性が担保できず、また、現在、有力視されている磁歪式では特殊な単結晶の板材料が必要であることからコスト面で課題がありました。一方、横浜国立大学で開発した新方式(垂直磁界アシスト式:特願2022-086851、斜め磁界アシスト式:特願2024-084029)では、材料選択の幅が広く、低コストで耐久性が優れる材料を利用でき(身の回りの磁石にくっつく鉄材でも可)、更に、原理的に従来よりも更なる高効率化・高出力化を実現できます(従来の300~500%以上の出力、消しゴムサイズで最大数百mW、黒板消しサイズで最大数W)。また、フィルム材料も使用できるため、微細加工との組み合わせにより超小型発電デバイスへの展開に繋がる可能性もあります。
振動発電デバイスの適用可能範囲は多種多様であり、普及による産業的および社会的波及効果は大きいものとなります。
センサと振動発電が融合することで、電池交換不要の完全ワイヤレス化が実現できます。その結果、センサの利用可能範囲が拡大し、従来、取得されてこなかった情報が得られるようになり、AIの活用とともに新たな未来社会のデザインが可能になります。その適用例として、以下のようなものが考えられます。
また、大型機械には制振機構が取り付けられ、多くの振動エネルギーが廃棄されてしまっています。更に、自然界にも、波などの未活用エネルギーが多く存在しています。これらを効率的に回収することにより、省エネルギー社会の推進に貢献することが出来ます。
現在、実用化に向けて、産学連携で研究開発を推進しています。
※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。