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まだ知られていない厳冬期の絶景を求めて

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水災害適応型社会の実現に向けたコンピュータシミュレーション

2021年3月19日金沢大学 理工学域
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水害レポート2019(国土交通省 水管理・国土保全局)より引用

工学ホットニュース

 アジアモンスーン域に位置する我が国においては、発達した線状降水帯や台風による大雨による災害が数多く発生し、近年では観測史上最大規模の降雨による大規模な水害も珍しくありません。一方、地球温暖化に伴う気候変化によって、将来における降水システムのさらなる大規模化や台風の強化と、極端な大雨の頻度増加が懸念されています。そのような状況においては、堤防やダムなどの構造物の設計を上回る規模の降雨や河川流出が生じ得るため、堤防を越えるほどの洪水や破堤による氾濫が発生すると考えられます。激甚化する水災害に対しては、従来のような土木構造物による対策だけではなく、設計規模を上回る洪水が発生した際の被害軽減策が必要です。そのためには、どこに、どのような水災害リスクが存在しているかを正しく推定することが不可欠です。大雨や洪水による浸水について実験を行うことはできないため、様々なコンピュータシミュレーションを活用した水災害リスクの評価が行われています。

温暖化予測結果を活用した将来気候の推定

 地球温暖化に伴って将来生じ得る降雨を推定するには、統計的な手法や、数値気象モデルを用いる手法などがあります。数値気象モデルは普遍的な物理法則に基づいて構築されたもので、適切な初期値と境界条件を与えることで現実的な気象条件のシミュレーションが期待されます。将来気候のシミュレーションを行うためには、全球気候モデル(GCM)による温暖化予測結果が利用されます。温暖化予測は世界中の様々な研究機関で実施されていますが、そのいずれが正しいのか、またどのような温室効果ガス排出シナリオが適切であるかはわからないため、その不確実性を考慮する必要があります。不確実性の考慮のためには、複数のGCMや複数の温室効果ガス排出シナリオの利用が考えられますが、アンサンブルシミュレーション手法との組み合わせも行われています。アンサンブルシミュレーションを行うことで、起こり得る様々な事象を検討することが可能となるとともに、最大日降雨量の確率分布の評価なども可能となります。

図1 シミュレーションに基づく現在と将来の降雨量の確率密度分布 図1 シミュレーションに基づく現在と将来の降雨量の確率密度分布

将来気候に基づく氾濫シミュレーションと水災害リスク評価

 数値気象モデルなどによって推定された将来降雨を入力値として、流出モデルを用いた流出解析によって洪水流量が推定されます。さらに、流出解析結果を入力とした氾濫解析モデルによって、洪水時の越流や破堤氾濫がシミュレーションされます。氾濫解析モデルでは、対象地域における浸水深分布を求めることができるため、推定された将来の大雨が実際に発生したときに、どのような浸水状況が生じ得るかを検討したり、時々刻々の浸水状況の変化から浸水到達時間を推定することが可能となります。さらには、シミュレーションによって得られた浸水深や流速を用いて、建物の損壊や経済損失といった水災害リスクを評価することが可能となります。複数のGCMや温室効果ガス排出シナリオの活用、さらにはアンサンブルシミュレーションの実施によって、入力降雨の統計的性質がわかっていれば、最大浸水深や経済損失の期待値の算定なども可能となります。

図2 シミュレーションによる最大浸水深分布

図2 シミュレーションによる最大浸水深分布

図3 シミュレーションによる経済損失分布

図3 シミュレーションによる経済損失分布

研究から社会実装へ

 水災害に強い地域づくりに向けて、将来起こり得る降雨イベントの推定や、それらを入力とした洪水流量や氾濫発生時の浸水深の算定に関する研究が進められていますが、そうした研究成果を社会へ役立てるためには、様々な課題が残されています。詳細な数値シミュレーションは、地域ごとのリスク評価に有効と考えられますが、多くの計算機資源を必要とするため、様々な地域での評価を行うには計算負荷の小さな手法の構築も必要となります。また、不確実性を考慮し、数多くのシミュレーション結果が得られたときに、それらをどのような情報として集約するかといった方法論の確立も不可欠となります。

リスクに対する適応策の検討と効果検証

 シミュレーションによってリスクが明らかとなったあとは、そのリスクをどのように小さくするかといった適応策の検討が求められます。また、検討した適応策によって、どの程度リスクが軽減されるかといった効果の検証も必要です。効果の検証においても、想定した適応策を適切に数値モデル内で表現することができれば、シミュレーションを行うことで定量的な評価が可能となります。

水災害に強い地域づくりのための分野間連携

 水災害リスクの評価は、河川工学や水文学、さらには気象学・気候学分野において進められてきましたが、地球温暖化によって洪水氾濫の可能性が高くなる場合、浸水が想定される地域での土地利用や住まい方といった、都市計画的な検討も必要となります。これからの水災害に強い地域づくりには、多様な分野の研究者の連携が一層重要となると考えられます。

 都市計画的施策の実施による都市構造変化の可能性や、将来の人口減少下における人口分布などについてもシミュレーションを行い、様々な状況下での水災害リスクを評価することが、水災害適応型社会の実現には必要です。

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