図1
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平成28年度診療報酬改定[1]により、質の高いリハビリテーションの評価が求められるようになりました。患者にとって安心・安全で納得できるリハビリテーションを提供するためには、今後ますます医工連携を推進する必要があります。大分大学 R3C(Rehabilitation Robotics Research Center)[2]は、「リハビリテーション」をすべてのヒトの社会復帰ととらえ、 これに有用な新規な「ロボティクス」機器、もしくはそれを含む システム全体の「研究」と開発、および社会実装を行っています。R3Cには、ロボット工学の主要な学問領域である機構学、制御工学、計測工学、数値シミュレーションの専門家と、リハ医学、理学療法学の専門家が在籍し、その有機的なネットワークによって、ものづくりをベースとした実践的な研究活動を行っています。
図2.車いす用着脱式足こぎユニット「こいじゃる」
図3.歩行器の電動化装置「B-GO」
平成30年2月22日に大分県社会福祉介護研修センターの福祉用具展示場内に、「おおいた産介護福祉機器コーナー」がオープンしました[3]。ここには、大分県の企業が開発した福祉用具が展示されていますが、この中の二つが当大学の研究成果を利用しています。
一つ目は、車いす用着脱式足こぎユニット「こいじゃる」(図2)です。福祉メカトロニクスコース 今戸・大津研究室では、トライボロジ-(摩擦・潤滑)に関する研究と福祉機器の開発を行っています。同研究室は、株式会社AKシステムと共同で本装置を開発しました。「こいじゃる」は後付け式のペダル装置であり、通常の車いすを足漕ぎ車いすとして活用できます。
二つ目は、歩行器の電動化装置「B-GO」(図3)です。同じく福祉メカトロニクスコース 池内研究室では、株式会社ブライテックと共同で本装置を開発しました。「B-GO」は、障がい児用歩行器に取り付けることで、これを電動化します。障がい児は自らの意志で移動することが可能となり、運動能力の促進と生活の質の向上につながります。
福祉メカトロニクスコース 菊池研究室では、力の感覚(以下、力覚)を提示可能なリハビリテーションロボット(図1の見出し画像、およびYoutube)の研究・開発を行っています。このロボットは、パソコンモニタから提示される視聴覚情報だけではなく、仮想物体を触っている力覚も提示可能です。さらに、ユーザーの位置と力の情報を計測し、その結果をすぐに表示することができます。この機能を用いることにより、運動ー認知ー感覚機能の連関による新しいリハビリ効果を提供します。さらに、結果の即時フィードバックによる訓練モチベーションの向上が期待できます。脳波を用いた実験では、適切な目標を与えたほうが訓練モチベーションが向上することが明らかとなっています。しかしながら、障がいの段階によって適切な目標値を設定することは容易ではありません。今後の研究によって解決すべき課題です。
現在、リハビリが必要であるがそのサービスを受けられないリハビリ難民が200万人以上いるといわれています。無医地区、準無医地区(医療機関・スタッフが少ない地域)に、だれでも気軽に使えるリハビリロボットがあれば、患者が自身やその家族の助けによってセルフリハビリテーションを実施することが可能になるかもしれません。我々は、そのようなロボットの開発を目指しています。
中山隼雄科学技術文化財団 【第23回研究成果発表会】 菊池 武士 患者のアドヒアランスを高めるリハビリゲームのスコア表示法
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