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まだ知られていない厳冬期の絶景を求めて

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地図アプリ「おにどこ」利用者の都市イメージ

2023年12月7日豊橋技術科学大学 建築・都市システム学系
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工学ホットニュース

 かつては、都市で生活をするなかでその地域を歩いたりと、その場を実際に経験することで人々は都市のイメージを形成していました。デジタルマップやストリートビューを搭載した地図アプリによって、あらゆる土地の情報を時間や距離の制約を受けず取得できるようになった現在、人々の都市に関する空間イメージには変化が生じているのではないでしょうか。

 本研究では、地図アプリの利用が生み出す都市イメージをスケッチマップ調査から分析し、その特徴を明らかにすることで、地図アプリをいかに都市と人々をつなぐツールとして有効に活用していくことができるか考察を行いました。

テーマの利用・大学での取り組み

 地域に対するイメージや景観特性について、これまで様々な調査や研究が行われています。これらの多くは都市空間における実体験を通して記憶された経験に基づいた「イメージ」が対象とされてきました。情報化が進み、デジタルマップやストリートビューを搭載した地図アプリの利用頻度が増した現在、実体験のみならず地図アプリの利用を通して記憶された経験が、人々の都市に対する「イメージ」の形成に影響を与えていると考えられます。

 豊橋技術科学大学建築・都市システム学系 水谷晃啓准教授らの研究チームは、豊橋市中心部に位置する安久美神戸神明社周辺を対象地とし、デジタルマップとストリートビューが併用可能な地図アプリ「おにどこ」を用いた実験を行いました。実験では、周辺地域に対して「土地勘を有する」グループ、「土地勘を有しない」グループを対象として、スケッチマップとよばれる被験者が描画した手描き地図に対する分析を行いました。「おにどこ」使用前のスケッチマップと使用後のスケッチマップに描かれた要素(①エレメント種類,②エレメント数,③パスの総距離,④描画面積の集計及びイメージの重心とその方角)の変化が、被験者の「おにどこ」の利用方法といかに関係しているか調査し、「おにどこ」の利用が生み出す都市イメージの特徴を明らかにしました。

 実験・分析結果から、「土地勘を有する」グループ、「土地勘を有しない」グループともに「おにどこ」使用によって都市に対する認知度があがることが明らかとなりました。特に、「土地勘を有しない」グループに対して、その効果が高くみられる傾向があることが示されました。さらに、「おにどこ」の使用によって、イメージマップの中心となる「安久美神戸神明社」の位置を示すイメージ重心が神社中心へと補正されることが明らかになりました。このイメージ重心の補正は「土地勘を有する」グループ、「土地勘を有しない」グループともに被験者の居住地から対象地域へ流入する方向と概ね一致する傾向があることがわかりました。加えて、「おにどこ」の利用合計時間に占めるストリートビューの利用時間が長いユーザーは線的に広がった形状のスケッチマップを、デジタルマップの利用時間の長いユーザーは面的に広がったスケッチマップを描く傾向が確認でき、使用した機能から得られる情報が都市イメージの形成に影響していることがわかりました。

今後の展望

 本研究を通して、「おにどこ」のような地図アプリの利用が、都市の空間情報の獲得を主とした中心性のあるイメージ形成に有効であること、その利用方法や利用時間に影響を受けることがわかりました。特に土地勘を有さないユーザーに対しての効果が大きく、その地を訪れたことがない人々に対しても都市イメージの形成を促すことができるという点から、「おにどこ」のような地図アプリをその地域の魅力を発信するツールとして活用していくことができると考えられます。時間や距離の制約を超えた仮想的な都市空間体験を可能とする地図アプリが、多くの人々と都市とを円滑に繋ぐツールとして活用されることが期待されます。こうしたデジタル技術によって変化した / するだろう人々の都市イメージ形成について、今後も注目していきたいと思います。

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