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自分らしく生きていくために

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空中ディスプレイを用いた
操作パネルの非接触・タッチレス化が進む

2020年8月21日宇都宮大学 工学部
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工学ホットニュース

『スターウォーズ』や『アイアンマン』などのSF映画では空中に浮遊するディスプレイが登場します。このような空中ディスプレイが、今、新型コロナウィルス感染拡大防止のための技術として注目されています。エレベーターのように不特定多数が利用する施設においてボタンを介した感染の不安があります。そこで、このようなボタンを空中映像で表示してセンサーで空中画面への接触を検知できれば非接触でボタン操作が可能になります。このようなタッチレス化は、特に医療機関において、安心と安全のために求められています。最近では現金自動預け払い機(ATM)の大手メーカーが空中ディスプレイを用いたタッチレス空中操作パネルを開発(「日立オムロン、病院精算機向けに仮想タッチパネル」)、病院での支払い機械の操作を空中ボタンを使って行う実証試験が始まりました(「感染リスク抑制へ クリニックで空中入力装置の実証実験」)。

テーマの利用・大学での取り組み

 空中に浮かぶ映像を表示する技術といえば「ホログラム」を想像される方も多いでしょう。光の波面を完全に再現する技術であるホログラフィーは究極の3Dディスプレイとして古くから期待されていますが、実用化には高性能の素子を開発する必要があるだけでなく、レーザー光の安全性など数々の課題があります。

 非接触・タッチレスの空中インターフェイスの実現においては、完全な3D映像の再現を必要とはしません。スマートフォンやタブレット端末の2D画面を空中に形成できるだけで、安全で豊かな操作を可能にします。空中でタブレット操作を可能にする「AIRR Tablet」というシステムの動画がYouTubeにありますのでぜひご覧ください(「AIRR Tablet」)。AIRR Tabletでは、AIRRと呼ぶ宇都宮大学の空中ディスプレイ技術と東京大学の高速ビジョンを使ったジェスチャー認識を組み合わせることで、空中のボタンをたたいたり、マルチタッチで空中スクリーンを操作したり、空気に絵を描いたりすることができます。

 さて、空中ディスプレイを形成するAIRR(Aerial Imaging by Retro-Reflection:再帰反射による空中結像)の秘密をご紹介しましょう。キーデバイスは、再帰反射素子と呼ばれる、看板や救命胴衣に使われる反射シートです。夜間のドライブで看板が明るく見えたり、懐中電灯で照らされた救命胴衣が明るく光るのは、光をもとの方向に帰す(再帰反射と呼ばれる)性質にあります。AIRRではマジックミラーと再帰反射素子を使って、光源から広がり出た光を空中に再び集束させることで空中映像を形成します。広い範囲から空中映像の位置に集束された光は、空中映像からは再び広がって広い範囲に伝搬します。つまり、空中にディスプレイがある時と同じように空中映像の位置から光が発せられることになります。そのため、人間の奥行き知覚で重要な4つの手がかり(寄り目の角度、両眼視差、ピント調節、運動視差)を満足して、空中に映像が浮かんでいることがわかります。詳しく知りたい方は、ミニ講義(「SFディスプレイを実現する光工学」)をご覧ください。

今後の展望

 空中ディスプレイ技術は、非接触・タッチレス空中インタフェースだけでなく、カーシェアリングや自動運転車における情報端末、アミューズメント施設や劇場などにおける新しい演出、高速道路での逆走防止の看板など、様々な用途での実用化が期待されています。自動車向けでは、東京モーターショーにおいてクラリオン(株)と本学の共同開発の空中ディスプレイがコンセプトカーに搭載されて展示されました。コネクッティッドカーの情報案内を行う空中エージェントがセンターコンソール登場してドライバーの運転を支援します。アミューズメント用途では、大画面の空中ディスプレイをつかったオペラが渋谷オーチャードホールで上演されました(「冨田勲×初音ミク『ドクター・コッペリウス』ダイジェスト映像」)。このオペラでは等身大のボーカロイドが空中に実際の映像として形成されるため、壇上のダンサーがボーカロイドの動きにぴったりと合わせて踊ることができました。その他、三菱電機(株)との共同研究がCEATECで展示されるなど、本学では総合電機・自動車関係・精密機械などのメーカーとの共同研究を通じて空中ディスプレイの社会実装に取り組んでいます。

 空中ディスプレイ技術を応用すると、水中にスクリーンを形成する水中ディスプレイも可能です。水の中に魚が通り抜けられるような水中ディスプレイの開発に世界で初めて成功しました。水中ディスプレイを使った行動生物学の実験については、基礎生物学研究所や東北大学、日本女子大学、水産研究・教育機構の生物学者や水産研究者と共同で進めています。空中映像や水中映像を生物に見せて反応を調べたり、行動を誘発したりする新しい学術分野「VR Biology」を提案しています。

 このような研究・開発には光学の活用が重要になります。宇都宮大学では「光工学」「工農連携」を重点領域として、「オプティクス教育研究センター(CORE: Center for Optical Research and Education)」と「ロボティクス・工農技術研究所(REAL: Robotics, Engineering, and Agriculture-technology Laboratory)」での研究推進とともに、基盤工学科では光工学の教育による人材育成を行っています。

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