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未知コンピュータウイルスの検出

2024年9月13日岩手大学 理工学部
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工学ホットニュース

 多くの人が毎日PCやスマートフォンの利用し、コンピュータやネットワークがなくては生活できない時代になりました。しかし、その一方で、コンピュータウイルスによる被害も増加し続けています。コンピュータウイルス(以下、ウイルス)とは、コンピュータに侵入し悪意のある動作をするソフトウェアの総称で、マルウェアとも呼ばれています。ウイルスは初期の頃は単なる「いたずら」で、犯人は自分の作ったウイルスで騒ぎになることを楽しんでいるだけでした。しかし、今は完全に「ビジネス」になっていて、企業のデータを暗号化して身代金を要求するランサムウェアや、個人情報を盗み出して悪用するスパイウェアなど、様々な種類が存在し、その被害額は莫大なものになっています。また、1日で新たに登場するウイルスは100万個を超えるため、人手による対応は不可能であり、自動で検出・駆除する手法が必要不可欠となっています。研究室では、新たに登場したばかりで世間では知られていない未知のウイルスを検出する手法を研究しています。

テーマの利用・大学での取り組み

 ウイルスの検出には、ウイルスの特徴を表す「シグネチャ」と呼ばれるパターンを用いる方法が一般的です。シグネチャは、ウイルスの特徴を表す文字列やバイト列であり、アンチウイルスベンダーがウイルスを解析して得られた情報を元に作成されます。アンチウイルスソフトは、コンピュータ内のファイルやメモリをスキャンし、その中にシグネチャと一致するものがあればウイルスと判断し、駆除します。しかし、この方法には欠点があり、シグネチャが登録されていない未知のウイルスには対応できません。そのため、未知のウイルスを検出するためには、シグネチャを用いない方法が必要となります。

 日々100万個以上も新たに登場する未知ウイルスですが、そのほとんどは既知のウイルスをわずかに改変しただけのものであり、亜種ウイルスと呼ばれています。つまり、未知ウイルスのほとんどは亜種であるため、既知ウイルスとソフトウェアとしての特徴がよく似ています。この性質を利用して、未知ウイルスを検出する手法を研究しています。既知ウイルスと似ているかどうかでウイルスを検出する手法では、以下の点について考える必要があります。まず、ソフトウェアの特徴をどうやって入手するのかという問題で、ソフトウェアを実行せずに静的な情報を利用するのか、それとも実際に実行して動的な情報を得るのかという選択があります。次に、どの情報をソフトウェアの特徴とするのかという問題で、シグネチャに使うような文字列やバイト列を特徴とするのか、それともファイル操作や通信などのソフトウェアが呼び出した機能を特徴とするのか、などの様々なパターンが考えられます。また、その特徴をどのようにデータとして表現するのかという問題もあります。最後に、それらソフトウェアの特徴をどのように比較するのかという問題で、類似度をどのように算出するのかという問題があります。純粋に計算式を使って類似度を算出する方法もあれば、機械学習やAIを用いて学習し類似度を算出する方法もあります。これらの問題には、その組み合わせによって様々なバリエーションが考えられます。研究室ではウイルスの検出率が高く、かつウイルスではないものを誤ってウイルスとして検出する誤検出率が低い組み合わせを探しています。それと、検出の速度も重要であり、リアルタイムでウイルスを検出するためには高速なアルゴリズムであることも必要です。

今後の展望

 ウイルスによる攻撃は個人の「いたずら」から、グループによる「ビジネス」へと変化することで、ますます多様性を増し、その被害も大きくなっています。ウイルスの攻撃は、以前は広範囲に向けて行われていたため、アンチウイルスベンダーによりウイルスもすぐに発見され、シグネチャが即座に作成されていました。しかし、最近では特定の企業や団体だけを狙い、それ以外の場所には一切攻撃をしない標的型攻撃が増えており、アンチウイルスベンダーが攻撃に気が付かない間に被害が拡大してしまうことがあります。また、ランサムウェアなどによる被害額も以前とは比べ物にならないほど大きくなっています。

 近年の生成AIを始めとするAIの進化は、ウイルスの検出手法にも大きな影響を与えています。生成AIは学習データから新たなデータを生成することができ、ウイルスの検出手法にも応用が可能です。しかし、その一方で、生成AIを用いて新たなウイルスを生成することも可能であり、未知ウイルスの出現頻度が大幅に増加する可能性があります。ウイルスを作成し攻撃する側と、そのウイルスを検出・駆除し防御する側の攻防戦は、今後も続くことでしょう。社会におけるコンピュータやネットワークの利用がますます普及する中で、ウイルスの検出手法の研究もますます重要になっています。研究室では、ウイルスの検出手法の研究を通じて、情報セキュリティの向上に貢献することを目指しています。

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