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フレキシブルセンサがIoT社会を加速する

2022年12月2日山梨大学 工学部・応用化学科
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工学ホットニュース

IoT社会を支える一兆個のセンサ

 インターネットを通じてヒトとモノ、モノとモノがつながるシステムである「モノのインターネット(IoT)」が注目されています。例えば、心拍センサを用いたヘルスモニタリング、スマホやスマートウォッチを用いた家電のリモートコントロール、靴底センサを用いた歩行センシングなどがあり、これらをネットワークに接続することで安全・安心な社会の実現を目指しています。IoT社会の実現には人体に装着可能なウェアラブルエレクトロニクス技術が不可欠であり、そのカギを握るのはフレキシブル(柔軟な)センサです。一般に、フレキシブルセンサは静電容量型と抵抗型に分けられます。静電容量型センサは安価で軽量、薄膜化も容易ですが、動きの方向を検出するモーションセンサには不向きです。一方、抵抗型センサは構造が単純で作製も容易ですが、常に電流を流す必要があることから消費電力が大きいという欠点があります。実際、年間で一兆個のセンサが生産される「トリリオンセンサ」社会を迎え、電力供給は深刻な問題となっています。

イオンゲルが問題を解決

 そこで、電力供給が不要な「無電源センサ」に着目しました。例えば、圧電性高分子を用いたピエゾセンサや、摩擦帯電による環境発電(エナジーハーベスティング)に関する研究が注目を集めています。しかし、電圧発生は瞬間的で、身体の動きのようなゆっくりとした動作の測定には不向きでした。私たちの研究室では最近、溶媒を含まず室温で液体状態の塩(イオン液体)をゴムのような柔らかく伸縮性を示す高分子に含ませた「イオンゲル」を新たに開発し、下図のように曲げるだけで数ミリボルトの電圧を発生することを見い出しました。電圧発生のメカニズムは「ピエゾイオン効果」と呼ばれ、一般的な圧電現象とは全く異なります。プラスイオンとマイナスイオンの動きやすさに差があり、ゲルを曲げるとイオンの分布が偏る(分極する)ことで電圧が発生すると考えられています。

 このようなフレキシブルセンサは、世界中で研究開発が加速している注目分野です。例えば、本年度からウェアラブルセンサとソフトロボットの実現を目指したSOFTWEARプロジェクトがHorizon Europeでスタートしました。Horizon Europeとは、欧州と世界の研究者が協力して重要な課題を解決し、次世代のためによりよい未来を築くことを目的とした国際共同研究事業です。山梨大学もSOFTWEARプロジェクトに参加しており、グローバルな視点で研究とイノベーションを推進しています。

英国の大学とのスカイプディスカッション

今後の展望

 ピエゾイオン効果を用いたフレキシブルセンサは、イオンの移動による分極を直接電圧として出力するため、電源や増幅器は不要です。興味深いことに、イオンゲルを曲げたときの発生電圧が屈曲変位に比例するだけでなく、屈曲速度が電荷に比例して増加することから、変位と速度を同時に検出可能な多機能センサであることがわかりました。一つのセンサで複数の情報が得られるため、センサの数を減らすことができます。また、印刷によるフレキシブルセンサの大面積化も可能であり、モーションセンサとして、バーチャルリアリティやゲーム、ヘルスケア、自動車、航空・宇宙、ロボットなど、様々な分野での応用が期待できます。このように、イオンゲルを用いたフレキシブルセンサは、安全・安心なIoT社会を加速するキーテクノロジーと言えます。

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