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まだ知られていない厳冬期の絶景を求めて

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人間と調和する生物型ドローンの研究開発

2023年2月10日長崎大学 工学部構造工学コース
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工学ホットニュース

 これまでは一般の人が空を利用するなんて考えられないことでしたが、近年のドローンの登場により、それが可能なものとなりました。ドローンの登場は“空の産業革命”とも呼ばれ、空撮や構造物の点検、農薬散布などでは既に実用化もされており、他にも様々なサービスが提案され、今後は益々活躍の場を広げると期待されています。しかし、私たちが生活している都市の中でドローンを見かけることはほとんどありません。これは、現状の飛行ドローンが人間にとってまだまだ安心できる存在ではないためです。これから空の利用を促進するためには、ドローンと人間社会との調和が求められます。そこで注目されているのが生物の飛翔方法です。鳥や昆虫は翼を羽ばたかせることで、小型サイズにも係わらず風のある屋外でも自由に飛行しています。また、生物は柔軟な翼をしなやかに羽ばたかせることで、翼接触に対する危険性や騒音を低減させています。このような生物の優れた羽ばたき飛行をドローンに応用することができれば、ドローンはもっと人々の身近な存在になり得ます。長崎大学では人間社会に調和するドローンを目指し、生物の飛行を参考にした羽ばたき型ドローンの開発を行っています。

テーマの利用・大学での取り組み

 鳥や昆虫は、翼をただ上下に羽ばたかせて飛行しているように見えますが、効率良く飛行するためには、翼をねじりながら羽ばたく必要があります。この複雑な羽ばたき運動を、鳥や昆虫は1秒間に数10回から数100回もの速さで実現しています。生物の羽ばたきを機械で実現するためには、一般的に複雑な機構が必要になりますが、重量が大きくなってしまい飛行には適しません。生物のように羽ばたくドローンを開発するためには、軽量かつ簡単な機構で、複雑な羽ばたき運動を実現する技術が必要になります。長崎大学では、企業や他大学との共同研究によって、両翼サイズ18cm、機体重量20gの手の平サイズの羽ばたき型ドローンを開発し、2枚の翼を1秒間に約30回の速さで水平に羽ばたかせることで、ワイヤレスでのホバリング飛行や垂直離陸に成功しました。この機体では、複雑な羽ばたき運動を軽量かつ簡単な機構で実現するために、翼を左右に振るだけで適切なねじれ角に受動的に変形するように、柔軟な構造として翼を設計しています。また、転倒せずに安定して飛行するために、尻尾の角度を細かく調整することで機体の重心位置を制御し、機体の姿勢を自律的に安定させています。

今後の展望

 現在のドローンは、複数のローターブレードを高速で回転させて飛行しています。大型サイズになるほど風に強く安定した飛行ができ、輸送できる重量も増えますが、墜落による地上への損害は大きなものになります。ドローンを小型化すれば人や建物への損害は小さくなりますが、今度は風の影響を受けやすく、屋外での安定した飛行は難しくなり、飛行性能は低下してしまいます。また、鋭く硬いブレードの回転には、接触によって損害を与える危険性や、回転翼に起因する騒音の問題があり、小型であっても人間との親和性が低いと言えます。一方、軽量かつ柔軟な翼を用いた羽ばたき型ドローンは、接触に対する安全性が高く静音性にも優れており、人間親和型のドローンとして、都市に暮らす人々と共存したドローンの活用が期待できます。しかし、同じサイズで飛行するハチドリと比べると、ドローンの重量は約2倍も重く、生物がいかに優れた設計をしているかが分かります。生物にはまだまだ学ぶべき技術が多く残されており、そこからヒントを得ることで、今までにない新しい技術の開発が期待されています。

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