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メタンハイドレート~脱炭素社会の実現に向けて~

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ほくろか?皮膚がんか?「熱」で診断

2019年8月2日弘前大学 多様系熱流体工学分野 助教 岡部 孝裕
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工学ホットニュース

ほくろのがんである悪性黒色腫(メラノーマ)は、進行すると命に関わる悪性度の高い皮膚がんであり、早期発見、診断、治療が重要である。ただし、初期段階の悪性黒色腫はホクロと極めて類似しており、皮膚科医であってもその鑑別に苦慮する場合がしばしばある。一般的にダーモスコープと呼ばれる光源付きの拡大鏡を使用し、腫瘍の色調解析に基づいて行われている。しかしながら、その診断精度は皮膚科医の熟練度によって大きく異なり、特に地方医療現場においては誤診による腫瘍の放置拡大が社会問題化している。それ故、医師の熟練度に依存しない新たな定量的診断手法が求められている。

テーマの利用・大学での取り組み

 これまで様々な研究者によって、がん組織の熱的特性は、健常組織と異なることが示唆されている。これに対して、弘前大学理工学部の研究グループは、「熱」でホクロか、皮膚がんか診断する「非侵襲熱物性計測による皮膚がんの定量的早期診断手法」の基本概念を提案し、東北大学病院との医工連携により、本手法の有用性を工学的かつ医学的アプローチで検証を進めている。診断では、独自に開発したペン型の診断機器を用いて、温度や熱伝導率などの熱的な特性を病変部と健常部の両方で計測し、その差異から診断時に有効となる客観的指標を得る。このペン型機器は、皮膚温度を0.01℃の精度で測ることが可能であり、従来機器に比べて高い精度を有する。これまでに、進行ステージの異なる11例の悪性黒色腫患者において臨床実験を実験し、世界で初めて初期段階の悪性黒色腫と健常皮膚の熱の流れやすさの違いの検出に成功した。さらに、進行性の浸潤がん患者における臨床実験では、腫瘍深さ(腫瘍の進行度)と熱の伝わりやすさに相関があることが明らかとなり、腫瘍専門医でさえ精確な診断が難しいとされる悪性黒色腫の進行度診断への応用も期待されている。これにより、疾病の進行度の定量化が可能となり、侵襲性の高い生検の適否の精確な判断につながり、患者のQOL向上に貢献できる。

今後の展望

 今後は、開発した診断機器の実用化を目指した大規模臨床研究を実施予定である。特に、悪性黒色腫においてがんの転移の有無を調べるために実施されるリンパ節転移を判定する患者への負担の大きい検査(センチネルリンパ節生検)の必要性を判断するために有用な診断機器となるように開発を進めていく。この研究が進めば、皮膚科医でなくても悪性黒色腫の進行度を迅速かつ簡便に診断することが可能となるため、最適な治療を開始できるようになり、多くの皮膚がん患者の生活の質の向上に寄与することが期待できる。その他、「なぜがん組織の熱的特性が健常組織と異なるか?」、「なぜ進行度によって熱的特性が変化するのか?」など、詳細な診断メカニズムに関する検証を熱工学的アプローチと医学的アプローチの両方を駆使して実施していく。

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