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まだ知られていない厳冬期の絶景を求めて

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「動くキャンパス・研究室」練習船汐路丸

2022年11月25日東京海洋大学 海洋工学部
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工学ホットニュース

 東京海洋大学は、我が国唯一の海洋系総合大学として「社会の持続的発展に資するため海洋を巡る学問及び科学技術に係わる基礎的・応用的教育研究を行う」という理念の下、教育研究に取り組んでいます。その特徴として、海鷹丸(うみたかまる)、神鷹丸(しんようまる)、汐路丸(しおじまる)、青鷹丸(せいようまる)の練習船を保有し、海洋・海事・水産分野に関する実践的な人材育成を行っています。

 練習船は一度に多くの学生を効率よく教育できる動くキャンパス・研究室であり、本学の使命の一つである船舶職員養成においても、重要な役割を果たしています。 汐路丸は旧汐路丸(1987年建造)、旧青鷹丸(1987年建造)の代替船として、2021年10月13日に竣工しました。船舶職員養成、船舶運航、海洋環境及び海洋開発の教育・研究機能を統合し、さらに災害支援機能も付加した最新鋭の練習船です。

 汐路丸は公益社団法人日本船舶海洋工学会が、毎年日本で建造された話題の船舶の中から、技術的・芸術的・社会的に優れた船を選考して与えられる「シップ・オブ・ザ・イヤー2021」の漁船・調査船部門を受賞しました。

主要観測機器配置図 主要観測機器配置図

汐路丸の先進的な機能

 汐路丸を建造するに当たっては、従来からの練習船として必要な機能、設備を装備することに加え、海洋科学技術の高度な教育、海洋資源専門家のための訓練、及び海洋生物学や海洋学の研究活動などに対応出来るように次の機能を盛り込んで建造しました。

(1)海洋開発人材の育成機能

 学生44名の乗船を可能とし、動くキャンパス・動く研究室として海洋開発に関わる教育を船上にて実践します。

(2)DP(Dynamic Positioning:船を定点に保持したり、決められた航路に沿って自動で航行する技術)オペレータ実習

 DPシステムのオペレータ実習に必要な機器を装備し、その特性等に関する教育を行うとともに、同システムを使用した操船実習を行います。

(3)AUV(Autonomous Underwater Vehicle:自律型無人潜水機)、ROV (Remotely Operated Vehicle:遠隔操作型無人探査機)実海域運用実習

 Aフレームや各種クレーンを備え、機材整備、実海域投入、回収後の整理等の実運用に関する実習を行い、データ取得と解析が行える観測室を備えています。

(4)海洋開発プラットフォーム、自立化船安全教育、遠隔操船教育

 高度化、自動化の進む海洋開発、船舶運航技術、安全等、海洋に関わる各分野の教育機能を有しています。

(5)総合的海洋環境観測、海底資源探査観測実習

 CTD(Conductivity Temperature Depth profiler:海水の塩分、水温、圧力等を計測するセンサー)測定装置・ソナードームを備え、海洋環境、海底資源、海洋底に関する知見の教育と共に、現場観測技術の習得、観測時の操船技術の教育を行います。

(6)海洋環境、経済性を考慮した推進システム

 ハイブリッド推進装置を備え、排出ガスの抑制と燃費向上の両方を実現した推進システムを装備し、海洋環境への影響を最小限に留める運航を可能とします。

(7)教育のための全国共同利用拠点

 全国の海事・海洋系カリキュラムを有する大学の教員・学生の幅広い教育に利用できる機能を有します。

(8)災害発生時の支援機能

 被災地へ海上から支援を行えるように、必要物資、水、燃料、電源等を運搬・供給できる性能を有します。

今後の展望

 我が国が海洋立国として発展し、国際貢献の一翼を担っていくためには、国内唯一の海洋系大学である東京海洋大学が、「海を知り、海を守り、海を利用する(Voices from the Ocean)」ための教育研究の中心拠点となって、その使命を果たす必要があります。このような基本的観点に立ち、本学は、研究者を含む高度専門職業人養成を核として、海洋に関する総合的教育研究を行っていきます。その中核をなすのが、汐路丸を含む本学の練習船です。今回竣工した汐路丸は本学学生の実習航海に従事するとともに、搭載した最先端機器を使用して調査研究航海を実施しています。その一例は次のとおりです。

  • 海洋学実習(伊豆海嶺東方にて黒潮縦断観測、相模湾から外洋への環境勾配観測)
  • 外洋観測実習(小笠原海嶺東方にて定期観測、渦追跡)
  • DP実習(相模湾にて)
  • 操船実習(館山湾にて)

 海洋、船舶、船員を取り巻く環境の変化は激しく、海洋においてはマイクロプラスチックによる海洋汚染問題、船舶においては海上安全の向上、船上の労働環境改善のための自動運航船の開発及び船舶からの温室効果ガス排出削減、船員においては世界的な海上輸送増加伴う優秀な船員の確保など、本学が取り組むべき課題は山積しています。

 これからも汐路丸は動くキャンパス・動く研究室としてその機能を最大限に発揮すべく、様々な課題にチャレンジを続けていきます。

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