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次世代のロボット:分子機械を組み立てて造る分子ロボット

2018年12月14日東京農工大学 工学部

白血球は外部から侵入した異物を1)センシング(感覚)し、異物と判断(思考)し、3)追いかけて貪食(運動)する。
このようなマイクロサイズのロボットを造るための分子ロボット工学が新しい学問領域として注目されている。

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ロボットというと皆さんはどのようなものを想像するでしょうか。HONDAのアシモやSoftBankのペッパーなどを思い浮かべるのではないでしょうか。最近ではロボット工学の発展に伴い、このようなのロボットが実際に社会で活躍しています。従来のロボットは金属やプラスチックといった材料で造られ、電子回路制御により動作しています。ごく最近、研究の世界ではより小さなサイズの、例えば微生物程度の大きさの、ロボットを分子を組み立てて造る「分子ロボット工学」が提唱されています。

分子機械に関する研究がノーベル賞を受賞

2016年、「分子機械:機械的な動きを行う分子」に関する研究がノーベル化学賞を受賞しました。これらの研究により、オングストロームサイズの分子によるモーターやアクチュエーターを造ることができるようになってきました。次のステップとして最近、このような分子機械や生物が持つDNAやタンパク質を部品としてマイクロサイズのロボットを組み立てる研究がはじまってきており、分子ロボット工学と呼ばれています。分子でロボット造るためには3つの基本要素が必要になります。1)感覚(センサー)、2)思考(演算)、3)運動(アクチュエーター)。これらの3つを組み合わせて、外部の環境を認識(センシング)し、認識したものが「何か」や「それに対してどのようにアクションを起こすのか」について考える(思考)し、最後に運動に結びつけます。これは機械的なロボットや生物などが普遍的に持っている要素です。例えば、身体の中にいる白血球は外部から侵入してきた異物をセンシング(感覚)し、異物だと判断(思考)し、異物を追いかけて貪食(運動)します。分子ロボット工学はまだはじまったばかりの学問領域ですが、将来的には身体の中で機能するロボット、具体的にはがん細胞などの病気のもととなる部位を自分で認識して自律的に治療を行うような、これまでにない新しいタイプのロボットを造るための手法として発展すると期待されています。

医療応用に役立つ分子ロボットの開発

fig1

分子ロボットを造るためには、化学、生物、物理、機械工学、電子工学など幅広い知識や技術が必要になります。東京農工大学工学部でも、これらの知識や技術を融合し、このような分子ロボットを造るための研究を行っています。最近も、人工の細胞膜のカプセルの中で作動可能なDNA分子を使い論理演算を実行するDNAコンピューティング技術を応用し、血液中に存在する癌の腫瘍マーカーを分子が自動でパターン認識するシステムを構築しています。これは分子ロボット3要素の1)感覚と2)思考を組み合わせたものとなります。将来的には自律的に動作する分子ロボットのボディにこのようなシステムを搭載し、診断や治療を行うような医療用分子ロボットの開発につながると期待しています。

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