この冬、日本に多くの夢と希望と感動を与えてくれている平昌オリンピック。オリンピック選手の活躍の裏側には北見工業大学(以下「本学」)の研究成果が活かされています。積雪寒冷地域に立地する本学は、その立地環境を生かして、冬季スポーツ研究に集中的に取り組むため、2016年4月に「冬季スポーツ科学研究推進センター」(以下「本センター」)を立ち上げました。本センターでは、冬季スポーツの中から「アルペンスキー競技」と「カーリング競技」を取り上げ、アスリートの競技力向上と積雪寒冷地における生涯スポーツの発展を目指し、用具開発やスキル解析等の研究を進めています。
ステルステック
ステルステックを装着したフットベッド
ポータブル戦術支援データベースシステム「iCE」
アルペンスキー競技においては、技術の向上を目的とした国内唯一(導入当時)の研究設備(Sky Tech Sport Ski & Snowboard Simulator)を2013年に導入しました。日本を代表する選手たちが実際にその設備を利用し、そこから得られるデータを基にスキー用具や動作に関するユニークな研究が進められています。
2016年10月、産学官連携により研究成果を活用した「ステルステック」という新たなスキーブーツ用パーツが誕生しました。北海道千歳市にあるブレイン株式会社との共同研究により、5年の歳月をかけて開発した商品です。「ステルステック」は3cm四方の薄いチップ状部材の片面にわずかにカーブを設けたパーツです。スキーブーツ内のフットベッド裏側の中心線に合わせ「ステルステック」を装着することで、スキーヤーはターン時にスムーズに内傾ポジションを取ることができるようになります。これにより選手はターン時の内傾角速度を向上させることができ、アルペンスキー競技における滑降タイムを短縮することができます。アルペンレーサーの大越龍之介選手や武田竜選手が開発から協力し、その機能を体験しており、スキー選手たちからは、「ターンのきっかけが格段にとりやすくなった。」と好評を得ています。
カーリング競技においては、北見市はカーリングの街といわれるほどの数多くの日本代表選手を輩出しています。このカーリング競技については、競技の戦略支援システムの開発や選手のスキル向上に向けた解析技術の開発に取り組んでいます。それらの研究の成果として、戦略・戦術面では、自然言語処理技術を駆使したカーリングインフォマティクスをタブレット端末に実現し、ポータブル戦術支援データベースシステム「iCE」を開発しました。試合情報を逐次的に収集・解析することができるため、既に戦略・戦術の検討を支援する強力なツールとなっています。
平昌オリンピックカーリング日本代表に決定し、活躍が期待されているSC軽井沢クラブ(男子)も本システムを活用しており、カーリング競技への科学的戦術支援に本学の技術が活かされています。
本学における研究面からのカーリング競技への技術支援については上に述べてきましたが、本学では学生もカーリング競技で大いに活躍しています。2017年1月30日からカザフスタンで開催された「第28回ユニバーシアード冬季競技大会」に、カーリング部男子チームが日本代表として参加し、本大会銅メダルのノルウェー相手に勝利するなど、強豪国相手に互角に渡り合い、「北見工業大学」の名前を世界にアピールしてくれました。
また、スキー、カーリングに関する研究・開発だけでなく、2016年6月からは北海道庁と道内の公的試験研究機関、社会福祉法人クピド・フェアとの産学官連携体制により、競技用シットスキー(座った姿勢で操るスキー)の開発も手がけました。
オホーツク地域の魅力向上、そして、この地域にある北見工業大学としての地域貢献を目指し、冬季スポーツ科学研究推進センターでの取り組みを進めていきたいと考えています。
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