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化学発光(ケミルミネッセンス)

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人体における高速無線通信・無線制御技術

2019年2月1日名古屋工業大学 電気・機械工学科
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工学ホットニュース

高齢化社会の進展に伴い、医療・ヘルスケア分野における人体における高速な無線通信技術に対する期待がますます高まっている。例えば、カプセル内視鏡のような体内に長時間滞留し、撮った画像を体外へ伝送するリモート診断は、人体内外間の高度な無線通信技術が欠かせない。また、体内を移動して患部に薬剤注入やサンプル採取・切除などの医用ロボットの実現も、体外からの高精度な無線制御ができることが前提条件であり、その実現には人体における無線通信技術はキー・テクノロジーとなる。

(図2)

(図2)

1秒当たり1千万ビットの
高速な人体における無線通信機の開発に成功

 人体における無線通信は、現在400MHz付近の狭い周波数帯の利用が主流であり、通信速度は1秒当たり数十万ビット程度で、高速・大容量・高画質な画像伝送や動画伝送、及び高精度・低遅延な医用ロボット制御には困難である。

 これに対し、10~60MHzの微弱無線周波数帯は、人体での伝搬損失が400MHz帯に比べて遥かに小さく、人体深部までの通信が可能であるうえに、広い周波数帯域が認証なく使用できる特徴を有している。名古屋工業大学の研究グループは、この特徴に着目し、10~60MHzの広帯域パルス伝送方式を採用した体内深部まで1秒当たり1千万ビットの高速無線通信機の開発に成功した。まず、広帯域信号が人体を伝送中に生ずる信号波形の歪みを元の形状に戻す波形整形技術を開発し、当周波数帯を利用した高速通信時に生ずる符号間干渉問題を解消した。次に、当周波数帯でのアンテナ小型化の難しさを、磁性材料の波長短縮効果を利用して解決した。ノルウェー・オスロ大学病院の協力を得て、ブタを用いた生体実験により体内26cmの深部までの高速通信を実証し、この成果は、体内深部まで到達した信号では世界最速の通信速度であり、従来に比べ30倍以上の高速通信を体内深部においてまで達成した。

 また、体内外間の無線通信だけでなく、体表での通信にも応用された。その一例として、体表複数箇所で筋電信号を取得し、それらを人体に装着されるロボット義手に高速で送り、多数の義手駆動モーターを低遅延で同時に制御している。これにより、人体装着型義手ロボットをヒトの意思通りに動かすことができており、実際のヒトよりさらに力の要る仕事(産業ロボット)やヒトの手や指でできる仕事よりさらに精巧な仕事(精密ロボット)をすることも可能になる。また、事故で腕や足を失った方の義肢や、病気で脳の指令が四肢に伝わらない患者の四肢のワイヤレス制御への展開も期待できる。(画像:図2)

今後の展望

 1秒当たり1千万ビットの通信速度を体内深部26cmまで達成したことは、ほぼすべての体型の人間に対して、体内あらゆる場所と体外との間の高速通信ができることを意味し、様々な医療・福祉・ヘルスケア分野での応用が期待できる。たとえば、

  1. 本無線技術をさらに進歩させ、カプセル内視鏡へ実装すれば、1枚ずつ体外へ伝送する画像の画質が飛躍的によくなり、腫瘍診断の信頼性の向上や早期発見などに繋がり、動画でのリアルタイム診断も現実的になる。
  2. 本無線技術を生体センサと一体化すれば、生体センサが体内どの位置に配置しても、その場所での生体情報を高速で体外また体内の他の場所へ送信でき、病状のモニタリングや診断・対処に利用できる。その一例として、心臓疾患患者に装着される心臓ペースメーカーは、パルス発生器を有するペースメーカー本体と心臓に挿入される電極からなるが、本技術により、パルス発生器と電極間との接続をワイヤレス化することが可能となる。(画像:図3)
  3. 本無線技術を体内医用ロボットへ実装すれば、一度多数の制御信号を同時に体外から体内まで伝送することができ、多数のモーターを同時に動かし、より細かな医用ロボットの動作制御が可能になる。
  4. 将来的に、脳波研究の進歩に伴い、脳波の検出と人体周辺における無線通信・制御技術を一体化し、考えるだけで思うままに人体周辺のロボットを動かすことができる時代が来るだろう。(画像:図4)
(図3)

(図3)

(図4)

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