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不可視光の撮影と新規アプリケーションの創出

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障害を超えて、スポーツのワクワクを共有しよう

2020年1月10日筑波技術大学 産業技術学部
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工学ホットニュース

 オリンピック・パラリンピックが東京にやってくる2020年、これまで知らなかったスポーツを実際に観戦して、感動を分かち合う機会としたい。

 いつも一緒にいる聴覚障害のある学生たちと一緒に楽しみたい。

 そこで私達は、観戦現場での状況を障害のあるなしに関わらず、伝えたい内容を持っている人が少しずつ情報を提供し、総体として意味のある情報を構築して、スポーツ観戦を共に楽しむために、ISeee TimeLine (ISeee TL) というシステムを作りました。

 ISeeeプロジェクトでは障害のない人もある人も、1) あるときは支援をし、また別の時には支援されるという双方向の支援、2) その場で獲得できる情報のみを伝えるのではなく、情報に付加価値をつける、という二つの点から、新しい形の情報保障を実現しようとしています。 2019年いきいき茨城ゆめ国体・ゆめ大会では茨城県公認の情報保障として実証実験を行い、それまで知らなかったスポーツを楽しむことができました。

テーマの利用・大学での取り組み

 筑波技術大学産業技術学部の学生は全員が聴覚に障害があります。したがって、学生たちには、自分では獲得できない情報が毎日の生活や大学の講義で出てきます。自ら獲得できない情報については、同等量の情報を音声から文字や手話のようにメディアを変えて保障を受けることがあります。これは、障害のある人がない人から情報をもらうという従来の情報保障です。ここでは、支援者と被支援者の間には明確な区別があり、役割は固定しています。しかし、私たちは聴覚障害のある学生たちと毎日接し、彼らは被支援者であり続ける必要はなく、他の人を支援できる力やスキルを持っていると感じています。そこで、障害があってもなくてもお互いに支援し、支援されることが可能な環境を作りたいと思うようになりました。

 ISeeeはInformation System of everyone by everyone for everyoneからつけた名前で、誰もが誰かの助けになる情報保障の実現を目指すプロジェクト[1]です。このプロジェクトでは、クラウドソーシングにより、支援者・被支援者の区別なく情報を少しずつ提供しあい、総体として価値のある情報を得ることができる新しい形の情報保障2.0を実現しようとしています。

 プロジェクトではスポーツ観戦のために、ISeee TimeLine (ISeee TL)[2]というシステムを開発しました。ISeee TLはウェブサイトを提供するため、誰もがすぐに参加でき、スポーツ観戦において重要なリアルタイム性を備えたSNSです。ネットワークを介して参加できるため、実際に観戦の場にいない人が様子を知ることや試合の様子を質問することも可能です。

 ルールを尋ねると知っている人が教えてくれる、"解説"というタグで検索すれば見逃したルールを知ることができる、ひやかしのコメントを軽く流すことができる、見て聞いていいなと思うコメントに"いいね"の気持ちを伝える、のように、競技を共に楽しむことができます。

 2017年から障害のある学生を交えて一緒にスポーツ観戦を楽しむ実験を重ねてきました。2019年は筑波技術大学のある茨城県で国民体育大会と全国障害者スポーツ大会が開催されました。このために、つくば市や茨城県庁の方々と、ルールを広く知られていない競技を多くの人と一緒に楽しむための協議を重ね、これまでにない形の公認情報保障としてISeee TLを使いました(台風19号のため全国障害者スポーツ大会は中止になってしまい、一部競技でのみの使用となりました)。

今後の展望

 私たちは、筑波技術大学という、障害者の声を聞いたり、希望や夢を現実にしやすい環境で研究開発を進めています。ISeee TLは情報保障2.0という新しいコンセプトを実現するシステムとして実証実験を重ねてきました。それだけでなく、ISeee TLは、支援技術研究の一つとしても国内外での研究会等での発信を続けていると同時に、クラウドファンディングで多くの方々にも知ってもらう取り組みも行ってきました[3]。

 東京2020パラリンピックでは、競技をISeee TLを使って学生たちと観戦を楽しみたいと考えています。そのために、誰にとっても優しいユーザインタフェースや多言語化を実現し、幅広く多様な方がスポーツを通して参加・交流できるための支援システムを目指しています。ISeee TLの使用は大きな大会に限らず、身近なところでどんどん使って行ってもらえれば嬉しいと思います。ISeee TLは東京2020パラリンピック後も世界中で使ってもらえるようなレガシーシステムの可能性があると考えています。

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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