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まだ知られていない厳冬期の絶景を求めて

まだ知られていない厳冬期の絶景を求めて

北海道の冬季観光を活性化させるための
ジュエリーアイス出現時期の予測技術

2022年11月10日北見工業大学 工学部
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※写真提供(岸本日出雄:株式会社札幌コマーシャルフォト)

工学ホットニュース

 国は2016年3月に第8期北海道総合開発計画を策定した。この計画では、新たに「食」と「観光」が戦略的産業として位置付けられ、観光産業の活性化が望まれている。近年、北海道十勝川河口の大津海岸では、光の反射によって様々な色に輝く無数の氷の塊「ジュエリーアイス」が打ち上がり、インターネット等のメディアを通じて全国的に注目されるようになった。北海道内はもとより道外から観光客が大津海岸へ足を運ぶようになった。一方で、ジュエリーアイスの出現現象は十分に解明されていないため、打ち上がり時期の予測技術は確立されていない。ジュエリーアイスを見るためには、いつ行けば良いのか、受け入れる側は、いつ受け入れ態勢を取れば良いのか、という要望に応えられる予測技術が求められている。

ジュエリーアイス出現時期の推定に成功

 ジュエリーアイスが出現するまでの自然現象について、現地観測結果に基づき、氷の形成、破壊、輸送、堆積、融解の5つの現象に区分した。これらの現象を定式化して出現時期を推定する手法を開発した。実際の出現時期については、海岸に設置したカメラ画像を用いて画像解析により定量的に堆積面積を算出した。本手法の推定値と画像解析により得られた実測値は良く一致し、ジュエリーアイスの出現時期を推定することに成功した。本手法の入力値は気温、潮位、風向、風速と各パラメーターであり、これらの値の予測値を入力すれば出現時期の予測が可能となる。

関連論文

岸本真志、吉川泰弘、芳賀聖一、甲斐達也:北海道大津海岸におけるジュエリーアイス出現時期推定手法の一検討、土木学会論文集B1(水工学)、Vol.78、No.2、2022.(印刷中)

三大学連携によるプロジェクトによる研究の推進

 北見工業大学は「特異な自然景観の発掘・予測研究ユニット」を発足させて、本ユニットの一つのテーマとしてジュエリーアイスの研究を推進している。本ユニットでは、小樽商科大学、帯広畜産大学、北見工業大学の三大学連携のモデル事業として「環境データ駆動・発見型観光 Zekkeiプロジェクト」を開催している。このプロジェクトの趣旨は、観光資源として眠っている自然現象とその景観を発掘し、写真や動画を公開して知名度を高める(ブランド化)とともに、科学的アプローチによる発生予測実践に向けた議論を行うことである。将来的には、高精度な気象予測を観光だけではなく防災、交通、農業分野への適用を検討するプロジェクトである。

ジュエリーアイス出現時期の予測精度の検証

 今後は、開発したジュエリーアイス出現時期推定手法の予測精度の検証を行う。具体的には、本手法をエクセル上で動作させて汎用性を持たせると同時に、実際の予測情報を下記のホームページで試験的に提供することを目指している。

 予測精度の検証を行うことで、予測情報の信頼性が向上する。さらに、本予測技術は他の地域への展開が可能となる。将来的には、AIを用いた画像判定等も取り込むことで、リアルタイムで現地状況を定量的に示すことが可能となる。また、データ総合・解析システムDIASにおいて、本予測技術を運用することで、より安定した情報提供が可能となる。

十勝地域における冬場の観光客を増加させるための基礎研究

 北見工業大学では、オープンイノベーション促進共同研究として、帯広畜産大学と豊頃町とともに「十勝地域の冬季観光を活性化するためのジュエリーアイス出現予測と連携したデータ駆動周遊モデル提案システムに関する基盤研究」を推進している。北見工業大学で開発したジュエリーアイス出現時期推定手法は、地域観光活性化に大きな期待があるが単発では観光資源として限界がある。この課題に対して、十勝管内の地域資源を良く知る帯広畜産大学と連携して周辺の観光資源と連動したデータ駆動型の周遊プラン作成システムを構築のための基盤調査を実施する予定である。

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