海外からの水素サプライチェーン構築の実証試験が民間主導で本格的に開始されています。日本政府が宣言した「2050年にカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出と吸収でネットゼロ)」を実現するためには、海外の豊富な再生可能エネルギーから水素を製造し、それを日本に水素サプライチェーンで輸送することが必須です。それには水素を液体の水素キャリアに転換して大型タンカー輸送する必要があります。水素キャリアの候補である液体水素、有機ハイドライドの海外からの輸送に関しては既に実証試験が行われていましたが、アンモニアについても実証試験が民間レベルで開始されました。出光興産株式会社は、アラブ首長国連邦の国営石油会社から同国で製造されたブルーアンモニアを購入し、四日市製油所への国際輸送・納入を完了したということです。
現在はブルーアンモニア、すなわち化石燃料由来の水素から製造したアンモニアに関する実証試験です。化石燃料を使用しても二酸化炭素を回収隔離すれば二酸化炭素の排出は抑えられますが、その量には限りがあり、できるだけ早く再生可能エネルギーを主体とした水素製造を実現させることが世界共通の目標です。新潟大学が取り組んでいる「太陽集熱による水熱分解水素製造システムの開発」は、オーストラリアや中東等の太陽日射が豊富なサンベルト地域の太陽熱を使って、水を熱分解して水素を製造するシステムの研究開発です。現在、オーストラリアの国立研究所CSIROと連携して、オーストラリアにおいて、新潟大学が開発したシステムの500kWスケールの実証試験に取り組んでいます。
実用化するには、製造したソーラー水素が安価である必要があり、それには大型化が必須です。現在、取り組んでいる500kWの実証試験で得られる知見を活用して、最終的には数十MW級に大型化しなければ、サンベルト地域であっても経済性を得ることはできません。また、同じシステムを使って、より大量の水素を製造するには、高活性の水熱分解触媒の開発が効果的です。単純に言うと、2倍の水素製造能の有する触媒を使用できれば、同じ大きさの太陽熱プラントを使って2倍の水素を製造できるので、価格が半分になります。新潟大学工学部は、このような水熱分解触媒の開発に関しても世界のトップランナーであり、今後も、海外の研究機関、国内企業等と連携して、サンベルトにおける太陽熱水素製造の大型実用化を目指して取り組んでいきます。
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