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役に立たない素敵な無駄

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セシウムを連続再生吸着できるフィルムの開発

2025年11月14日山形大学 工学部
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工学ホットニュース

 山形大学では、室温原子層堆積法を用いて、熱に弱いフレキシブルフィルム上にイオン交換吸着能力を有するアルミニウムシリケート膜を積層する技術を開発しました。この積層膜は、セシウム汚染水からセシウムを吸着し、高濃度の食塩水によってセシウムを除去することで、吸着能力を再生することが可能です。この技術を応用し、ロール・トゥ・ロール型のセシウム除去装置を開発しました。

 従来、セシウム除去には固体のゼオライトが用いられてきましたが、使用後に重量のある放射性廃棄物となるという課題がありました。本研究で開発したフィルムは繰り返し使用可能で、非常に軽量であるため、廃棄物の問題を軽減することができます。本技術は、原子力発電所事故に伴う汚染水問題の解決に貢献できると考えられます。

テーマの利用・大学での取り組み

 山形大学では、常温で金属酸化物膜を薄膜形成できる室温原子層堆積法を開発しており、これにより熱に弱いフレキシブルなプラスチックフィルム上に、セシウム吸着特性を有するアルミニウムシリケート膜を形成することが可能となりました。この膜は、セシウムを含む水溶液に浸漬するとセシウムが表面に吸着し、その後、高濃度の食塩水に浸すことでセシウムが除去され、吸着性能が回復する性質を有することが確認されました。

 本研究では、ロール・トゥ・ロール型のセシウム除去装置を試作し、数十mL規模の模擬汚染水からセシウムを除去できることを実証しました。これにより、原子力汚染水処理装置としての応用可能性が示されました。 (本研究は、科学研究費補助金(基盤研究A)による成果です。)

今後の展望

 実用化のためには、様々なセシウム濃度での除去能率を確かめ、それをもとに大型装置を開発し、機能性検証につなげます。ロール・トウ・ロール型にして繰り返し使用できるセシウムの吸着装置が実用化されれば、放射性廃棄物を抑えた処理法として、事故原発の汚染水問題の解決に貢献すると考えられます。

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