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まだ知られていない厳冬期の絶景を求めて

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省エネルームエアコンのグローバル普及を実現する電源高調波規制適合ローコストインバータの開発

2019年3月22日長岡技術科学大学 工学部
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工学ホットニュース

近年、エアコンは、中国・新興国においても、省電力効果の高いインバータエアコンへの要求が高くなってきています。しかし、欧州・中国等ではインバータに流入する電源高調波の規制が厳しく、この対応としてPFC回路を付加する必要があり、グローバルな普及にはコスト的に大きな課題がありました。

これまで長岡技術科学大学(以下「本学」)から、PFC回路および電解コンデンサを不要にできる「電源高調波規制適合ローコストインバータ」の基本概念が発案され、ダイキン工業(株)との産学協同にて本技術の基本動作および有効性を理論的、実験的に検証を進めてきました。

テーマの利用・大学での取り組み

開発したインバータ基盤を搭載したルームエアコン室外機

開発したインバータ基盤を搭載したルームエアコン室外機

 ダイキン工業(株)は産学共同を通した知見を踏まえて商品化開発を進め、本技術を搭載したルームエアコンを中国・新興国向けとして平成23年1月に量産開始、世界で初めて実用化しました。初年度の生産台数11万台から順次適用機種を拡大し、平成28年度155万台と大きく伸長。販売開始時期からの累計は400万台で、世界的な省電力化、地球温暖化軽減、環境負荷低減に寄与しています。

 大石潔教授と芳賀仁准教授の研究成果をもとに、本学とダイキン工業(株)で産学連携を開始し、ダイキン工業(株)は産学共同を通した知見を踏まえて、新興国ボリュームゾーン向けルームエアコン向けのコア技術として世界で初めて実用化。全世界で最も競争力ある技術として省エネインバータエアコン普及拡大へ貢献しています。一企業では理論検証に弱みがあるところを、大学との連携によって、高度な制御技術の商品化を早期に実現できています。また産学連携において、本学の特色ある教育プログラムである実務訓練を活かしてダイキン工業(株)へ学生を約5か月間派遣して、学生も交えて連携することで効率的な技術開発の実現に役立てています。

 この技術は、企業、大学、公的研究機関等における科学技術イノベーションに係る産学官連携活動において大きな成果を収め、オープンイノベーションの観点から先導的な取組みを行う等、当該活動の推進に多大な貢献をした産学官連携の優れた成功事例に対して与えられるものである第15回産学官連携功労者表彰 文部科学大臣賞 を受賞しています。

今後の展望

 近年、CO2の削減による環境負荷の軽減や頻発する自然災害による大規模停電回避などのために、地域ごとの電力ネットワークのロバスト安定化が強く求められています。理想的な電力ネットワークは無効電力ゼロ(力率1)で構成されることです。電力ネットワーク末端の住宅やオフィスを高力率・高効率で形成すれば、電力ネットワークの上位の基幹電力の余裕度が増して、安定な低電力社会が実現できます。電力ネットワーク末端の地域全体を無効電力ゼロにするには、それを可能にする設備を全ての住宅・オフィスに普及させる必要があります。その普及を図るためには、設備は安価で安全で小規模であることが必須です。そこで、電力ネットワークの末端の住宅・オフィスにあるエアコンと冷蔵庫のモータ制御だけで無効電力ゼロを安全かつ低コストで達成することを目的とします。これにより、電力ネットワーク末端をすべて無効電力ゼロの住宅・オフィスで形成して、低電力社会を実現する当該技術は、冷蔵庫などコンプレッサを持つ家電製品にも応用が期待できます。今後は、当該技術の更なる省エネルギー化を進め、地球環境に役立つ技術の創出を目指します。

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