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おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

「葉っぱでアクセサリーを作ってみよう」

2020年12月18日
熊本大学 工学部

はじめに

植物の葉は、光合成と呼ばれる、光エネルギーを使って水と空気中の二酸化炭素から炭水化物(糖類:例えばショ糖やデンプン)を合成する役割を担っています。そのため、葉肉細胞は光が透過しやすいよう、細胞壁は薄く、光合成タンパク質を多く含んでいます。一方、養分や水を植物の組織や細胞に運ぶため葉肉細胞の間を走る葉脈は、動物の血管に相当する器官であり、細胞壁は分厚く硬いです。このように、異なる器官では、構成成分、細胞の種類や形態が異なることが予想できます。葉脈と葉肉の異なる主成分に基づく溶解特性を利用して、葉脈標本を作ることができます。様々な網目構造の葉脈標本はとても美しく、デザイン素材として注目されています。今回は、葉脈標本からなるアクセサリーを作る方法を紹介します。

準備するもの

葉っぱ※1、手袋、水酸化ナトリウム(NaOH)、塩酸(HCl) 、ピンセット(プラスチック製/セラミック製)、ガラスビーカー×3、キッチンペーパー、絵の具、歯ブラシ、アクセサリー用道具(ヘアゴム、ピアス金具、UVレジンなど)

実験方法

  1. 25wt% NaOH水溶液を200 ml 調製し、80℃の恒温槽で温める。

  2. 葉っぱを入れて、80℃で60-90分間、加熱を続ける。※2

  3. 柔らかくなった葉っぱを中和用HCl水溶液(0.05N)に5分浸し※3、洗浄用水ですすぐ。※4

  4. 葉っぱを歯ブラシでたたいて葉肉を落とす(葉脈を残す)。

  5. キッチンペーパーで水分を拭き取る。

  6. 葉脈に色を塗る(余分に付くので、塗った後キッチンペーパーで拭く)。

  7. UVレンジで固め、アクセサリーを作る。

  8. 完成

注意点

水酸化ナトリウム溶液は、強アルカリ性ですので、皮膚や目につくと大変危険です。実験される場合は、手袋やエプロンをつけて行い、取り扱いに注意しましょう。皮膚についたらすぐに水道水で洗いましょう。廃棄する前には塩酸等で中和する必要があります。

※1:新しい葉は柔らかいため不向きです。緑色が濃く古い葉を採取しましょう

※2:アルカリで煮る時間に注意(長すぎず、短すぎず)

※3:洗い終わった葉っぱがぬるぬるしていたら中和不足

※4:洗浄用水はたまに交換する

実験の解説

葉っぱを水酸化ナトリウム水溶液につけたときに葉脈だけ残る理由は、葉脈と葉肉(葉脈以外の部分)の主成分の違いにあります。葉肉の主成分であるタンパク質や炭水化物は水酸化ナトリウム水溶液のようなアルカリ性溶液にとけますが、セルロース、リグニンを主成分とする葉脈は、水酸化ナトリウム水溶液に溶けません。
セルロースは多数のβ-グルコースが繋がった高分子であり、親水性の高いヒドロキシ基が多数存在するが、分子内及び分子間の水素結合やファンデルワールス力により疎水性部位の結合を強めているため、不溶性の分子集合体を形成しています。また、葉脈の細胞壁はリグニンという芳香族高分子化合物で補強されているため、分解しにくく、より硬く安定した物質となっています。従って、葉っぱを水酸化ナトリウム水溶液に浸すことで葉脈だけを残した葉脈標本を作ることができました。しかし、長時間浸すと、セルロースの一部の水素結合が切れて、葉脈の強度が弱くなることがあります。

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