ここでは、テレビ受信用の八木・宇田アンテナを作ってみましょう。
八木・宇田アンテナは、東北大学で八木秀次博士と宇田新太郎博士の共同研究によって発明されました。
下図に構造を示します。
大まかには、アンテナは反射素子、給電素子と複数の導波素子で構成されます。
導波素子と反射素子は、放送局から飛んでくる電波を集めて、給電素子に導く役割を持っています。
給電素子は電波を電気信号に変換する役割で、ケーブルでテレビとつながっています。
動作の様子を簡単な3素子アンテナで説明します。
アンテナでは、送信と受信は信号の向きが違うだけで同じ特性です。
ここでは、放射の動作の様子で説明します。
給電素子(黒)の長さを約半波長とし、導波素子(赤)を給電素子よりも短く、反射素子(青)をそれより長くします。
導波素子は、給電素子より1/4周期遅れて、反射素子はそれより1/4周期進んで振動します。
その結果、導波素子方向(右方向)では電波が重なりあい、反射素子方向(左方向)では打ち消し合います。
導波素子の数を増やすと、より多くの導波素子方向(右方向)からの電波を集めることができます。
導波素子の振動の様子
給電素子の振動の様子
反射素子の振動の様子
右に3素子と7素子のアンテナの設計図を示します。
設計した3素子八木宇田アンテナ特性です。
左から、VSWR、利得と放射パターンです。
設計した7素子八木宇田アンテナ特性です。
左から、VSWR、利得と放射パターンです。
アンテナ周りの電界分布の様子を示します。
導波素子方向(左方向)に電界が強くなっているのがわかります。
アルミパイプを切断してアンテナ素子を作製します。
パイプカッターなどを用いて設計図の寸法でアルミパイプを切断します。
放射素子はギャップ(1mm程度)を設けるため、パイプから切りパイプカッターなどを用いて設計図の寸法でアルミパイプを切断出す際はその分を差し引いておき、さらに半分に切断します。
給電素子に整合器を取り付けるため、ビス止め用の穴をあけます。
(写真ではボール盤を使っていますが、ペン型ハンドドリルでも穴をあけることができます。)
穴が内側に向い合せになるようにして、樹脂パイプを挿入します。
ビスで固定して給電素子が完成します。
給電素子に、ビスで整合器を固定し取り付けます。
給電素子、導波素子と反射素子木材に指定の間隔に配置して、接着剤で仮止めします。
各素子が動かないようにタコ糸で縛り、その上から接着剤を塗り、完全に固定します。
ケーブルの片方を先端から14㎜程外部被覆を切り取り、網組み状の外部胴体を折り返します。
内部絶縁体を2㎜程残して剥き、内部導体(銅線)を露出させます。
5C栓を外部銅線と絶縁体の間に入るように押し込みます。
先にリング形状の固定具を通しておいてください。
余分な網状外部胴体を取り除き、ペンチでリング形状の固定具を締めつけます。
内部銅線を栓から2㎜程出ている位の長さに切りとります。
反対側も同様に作業を行なって、同軸ケーブルが完成です。
給電素子とケーブルをつなぐ1:1整合器を自作してみます。
入手しやすい市販の整合器は1:4なので、これを修正して利用します。
まず、4本のラッピングワイヤーで2組を用意します。
それぞれを、フェライトコアに2回巻きます。
コイルが完成します。
完成したコイルをコネクターとケーブルに接続します。
最後にそれを、元のケースに戻せば、1:1整合器の完成です。
普通、テレビには75Ωの同軸ケーブル、アンテナには300Ωの平行フィーダーケーブルが接続されています。
同軸ケーブル(75Ω)と平行フィーダーケーブル(300Ω)とは相性が良くないので、1:4(75:300)の整合器を介してつなぎます。
ここでは、アンテナを75Ωの平行フィーダーケーブルにつないで使うように設計しています。
そのため、整合器を1:1(75:75)に修正して使います。
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