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おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

磁石でプラスチック球を弾き飛ばしてみよう

2022年2月10日
弘前大学理工学部 電子情報工学科
准教授 丹波 澄雄

はじめに

 磁石は文房具などでも使われていますが、ハイテク機器の中でも使用されています。最近は超強力なネオジム磁石が100円ショップなどで簡単に入手できるようになりましたが、スマホやICカードなどに近づけると故障の原因になると言われています。

 今回はこの超強力磁石の力を用いて最終的にプラスチック球を弾き飛ばす仕掛けを作って動かしてみます。

準備

材料

  • 銅棒:3本(長め2本、短め1本)
  • ネオジム磁石:12個ぐらい
  • 単3電池:2個
  • 電池ケース:1個
  • ワニ口クリップ:2本
  • 鉄球:6個以上
  • プラスチック球:1個

方針

 磁石の力を用いたガウス加速器でプラスチック球を弾き飛ばしますが、ガウス加速器に鉄球を近づけるために、手で動かすのではなくレールガンとして知られている電磁加速器を使用します。

解説

 図1は作成したプラスチック球射出装置の全体像で、(1)がレールガンの部分、(2)はガウス加速器の部分となります。

図1:作成したプラスチック球射出装置の外観図1:作成したプラスチック球射出装置の外観

 初めに、(1)のレールガンの部分を説明します。

 図2のように、平行に設置された2本の銅棒上に置かれた短い銅棒に、単3電池で得られる電流Iとネオジム磁石による磁界Bを作用させることでフレミングの左手の法則で示される方向にローレンツ力Fが発生し、短い銅棒が動き出します。

図2:電磁加速器図2:電磁加速器

 図1のレールガンの部分では、2本の平行に置いた銅棒の間に複数個のネオジム磁石のN極が上になるように表面テープで固定してあります。銅棒の一方に電池のマイナス側をワニ口クリップで接続し、もう一方の銅棒にプラス側を同様に接続します。短い銅棒は中心が2本の銅棒の中間で2本の銅棒にほぼ直角になるように左端のネオジム磁石の中心付近に置きます。

 スイッチを入れると、短い銅棒(質量M0)がローレンツ力Fによって動き出します。

 動き出した短い銅棒に加わる力FはF=I・B・lとなります。ここで、Iは流れる電流、Bは磁界の強さ、lは2本の銅棒間の距離です。

 F= M0・aより加速度a = F/M0= I・B・l /M0で短い銅棒は2本の銅棒上を移動しながらv0まで加速されます。このときの運動エネルギーE0はE0=1/2・M0・v02と表わされます。そして、短い銅棒(質量M0)は前方の鉄球(質量M1)に速度v0で衝突して運動エネルギーを渡すことで鉄球が速度v1で動き出します。

 速度v1で動き出した鉄球(質量M1)の運動エネルギーE1はE1=1/2・M1・v12と表され、衝突によるエネルギーロスがなければE1= E2となるので、v1=√(M0/M1)・v0となります。

 図3は衝突前後の状態を示しています。

図3:衝突前後の銅棒と鉄球の速度図3:衝突前後の銅棒と鉄球の速度

 レールガンの部分で短い銅棒を高速で動かすためには大きな電流が必要ですが、危険なので単3電池2本程度で流せる電流に留めてあります。今回の回路では2本の銅棒と短い銅棒自体の抵抗および乾電池の内部抵抗が全体の抵抗となりますが、実際は乾電池の内部抵抗が大半を占めるため実験を繰り返すと乾電池が発熱します。実験のとき以外は短い銅棒を載せておかないこと、使用したら直ぐにスイッチを切ることに注意して下さい。実際、単3電池2本程度で流せる電流に留めてありますので発生する力の大きさはやっと短い銅棒が動き出す程度です。

 次に、(2)のガウス加速器の部分の説明をします。

 速度v1で動き出した鉄球はガウス加速器のネオジム磁石の磁力に引きつけられて加速します。ネオジム磁石から距離rにある鉄球に働く力はクーロンの法則により距離の2乗に反比例して強くなります。鉄球はネオジム磁石の磁力によって磁化されますが、ネオジム磁石の磁力も距離の2乗に反比例して強くなります。鉄の磁化特性は材質によって様々ですが、単純に磁力に比例して磁化すると仮定すると、鉄球に働く力は距離の4乗に反比例して強ますことになります。速度v1で動き出した鉄球はこのような力で加速され続けて衝突時には速度v2に達します。このときの鉄球の運動エネルギーE2はE2=1/2・M1・v22と表されます。

 衝突時の鉄球の運動エネルギーE2は磁石と数個の鉄球を通して右端の球まで伝わり、右端の球(質量M2)は速度v3で飛び出します。図4がその状態を示しています。このときの球の運動エネルギーE3はE3=1/2・M2・v32と表され、衝突によるエネルギーロスがなければE2= E3となるので、v3=√(M1/M2)・v2となります。右端の球が鉄球であればM1=M2となるので、飛び出す速度v3は衝突速度v2と同じになります。

 右端の球がプラスチック球の場合、鉄の比重が約8、プラスチックの比重を1程度とすると√(M1/M2)は3程度となるので、飛び出す速度v3は衝突速度v2の3倍程度となります。

図4:鉄球がガウス加速器に衝突する前後の速度図4:鉄球がガウス加速器に衝突する前後の速度

実演

 動画をご覧下さい。

動画1:ネオジム磁石の右側に鉄球6個とプラスチック球を置いた場合
動画2:ネオジム磁石の右側に鉄球3個とプラスチック球を置いた場合

考察

 動画1の場合、右端のプラスチック球と6番目の鉄球が飛び出しています。これはネオジム磁石の磁力で鉄球6個が繋ぎ止められて一体となっていたにもかかわらず、磁石から最も遠い6番目の鉄球が磁力による拘束を振り切って、運動エネルギーの一部を得て飛び出したと考えられます。

 動画2では右端のプラスチック球しか飛び出していません。鉄球3個が磁力でしっかり繋ぎ止められていたため右端のプラスチック球に運動エネルギーの全てが与えられたと考えられます。

試してみよう

 ネオジム磁石の右側と左側に置く鉄球の個数を変えて鉄球が飛び出す様子の変化を観察して法則性を見出してみよう。

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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