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環境への取り組み

あたりまえに環境教育

九州地区

2023年10月27日
九州地区

鹿児島大学工学部建築学科
鷹野敦

はじめに

「衣・食・住」は人間生活の基本ですが、こどもたちが「住」について学ぶ機会は多くありません。しかし、豊かで持続的な暮らしの実現には、その舞台となる建物や周辺環境をより良く整えていくことが重要です。そのような「住環境」について早くから学び考えることは、自分の暮らしを豊かにするだけでなく、美しい街や建物の創造、地球環境への配慮など、将来のより良い社会づくりに貢献する「人」を育むことに繋がると考えています。ここでは、日頃実践している教育活動を紹介したいと思います。

産学で取り組む“こどものけんちくがっこう”

「こどものけんちくがっこう*1」は、自分たちの暮らす環境について、小・中学生が「ものづくり」を通して体験的に学ぶ場です(写真1)。鹿児島を拠点に、大学と工務店の協働による任意団体として、2016年度に活動を開始しました。2018年度からは、特定非営利活動法人として教育プログラムを実施しています(図1)。簡単に言うと、ピアノや算盤と同じように「習い事」として環境や建築について学ぶ学校です。4つの授業: 定期授業・夏期課外授業・オンライン授業・体験授業を通年で開講しています。

「定期授業」は、小学3年生から中学生を学年毎のクラスに分け、対面で月に2回行います(2時間/クラス・回)。簡単な木工から生活環境に関する座学や見学、建築模型や実大の架構の製作など、年齢に合わせて段階的に楽しく学ぶ授業です(写真2, 3)。「夏期課外授業」は、実際に小さな木造建築の建設などを行う授業です。地元の企業等から依頼を受け、生徒たちがアイデア出しから建設作業まで主体的に取り組む実践的な授業です。これまでに、ツリーハウスの建設やデジタルファブリケーションによる家具製作などを行いました(写真4, 5)。コロナ禍を機に開始した「オンライン授業」では、日本各地から集まった生徒がモニターを通して一緒にものづくりをしたり、海外在住の方々に現地での暮らしや住まいを紹介してもらう“世界のお宅訪問”などを行っています(写真6)。小学校への出前授業やイベントでのワークショップ型授業を通して、子供達が環境や建築に触れる機会をより広く提供する「体験授業」も不定期で行っています(写真7)。

写真1: あたりまえに建築や環境を学ぶ「こどものけんちくがっこう」写真1: あたりまえに建築や環境を学ぶ
「こどものけんちくがっこう」
写真2: 金物を使わない木橋の製作授業の様子写真2: 金物を使わない木橋の製作授業の様子
写真3: 森と土場の見学授業の様子写真3: 森と土場の見学授業の様子
写真4: 2021年夏期課外授業: デジタルファブリケーションによるスツールの製作写真4: 2021年夏期課外授業:
デジタルファブリケーションによるスツールの製作
写真5: 2022年夏期課外授業: ツリーハウスの建設写真5: 2022年夏期課外授業:
ツリーハウスの建設
写真6: オンラインによるものづくり授業の様子写真6: オンラインによるものづくり授業の様子
写真7: ワークショップ型授業の様子写真7: ワークショップ型授業の様子
写真8: 大学生が先生としてこどもたちに授業を行う写真8: 大学生が先生としてこどもたちに授業を行う
図1: こどものけんちくがっこうの体制図1: こどものけんちくがっこうの体制

大学での教育活動との接続

 こどものけんちくがっこうでは、建築を学ぶ大学生が先生を務めます(写真8)。これは、薩摩藩の「郷中教育」に倣い、年長者(大学生)が年少者(小・中学生)に「学びつつ教え、教えつつ学ぶ」という教育の場を目指したものです。これまでに、先生や授業補佐として関わった大学生は延べ160名を超えます。「教えることは最良の学び」と言われますが、関わった学生の建築に対する姿勢や取り組み方には変化が生まれます。また、社会人の運営メンバーや協同する自治体や企業の担当者とのやりとりは、大学内での教育とは一線を画する実践的な学びの機会になります。自分たちが学ぶ建築の楽しさや大切さをこどもたちに伝えることで、建築の専門職になる責任や社会的な意義について考えてもらいたいと思っています。

 大学が有する人材・知財を繋ぎ、社会に開き、次の世代を担うこどもたちや大学生に還元する横断的な教育活動を今後も展開していきます。

参考文献

1: https://kodomonokenchiku.blogspot.com

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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