超電導現象は極低温で電気抵抗がゼロになる現象のことを言い、この現象を発生させることのできる物質が超電導体です。超電導体の応用例として、超電導リニアや核磁気共鳴画像(MRI)、核融合炉でのプラズマ封じ込めなどが有名です。また、超電導体内部に磁場が侵入できないマイスナー効果などの特徴もあります。
今後の科学技術分野で活躍しそうな超電導体ですが、元々は液体ヘリウムなどで絶対零度近くの極低温に冷却する必要が有り、実用化における問題となっていました。しかしながら、約-196℃の液体窒素冷却で超電導状態に遷移できる高温超電導体が開発されたことで応用が容易に成りました。また、高温超電導体は内部に常電導の不純物が混在しているため、超電導体内部に磁束の侵入を許容し、磁束を見かけ上固定化するために、磁場変動に対して復元力が発生するピン止め効果が発現します。群馬大学理工学部電子機械類では、このような特徴を持つ高温超電導体を利用して非接触磁気浮上回転系(図1)を利用した摩擦のない超電導磁気軸受並びにその応用に関する様々な研究を実施してます。
高温超電導磁気浮上回転系は高温超電導体と永久磁石だけで構成でき、浮上のためのエネルギーは必要ありません。また高温超電導体のピン止め効果により通常の磁気浮上には不可欠な位置制御も必要有りません。このため非常に簡単な構造で安定な非接触浮上系を無制御で構築することができます。ただし、超電導体のコストや冷却の必要性などの課題があるために、可能な限り高温超電導体を小型化しつつ大きな浮上力並びに安定性を得ることが重要になります。手法の例を挙げると、超電導体の分割や、永久磁石の磁束集束配置方法の応用、他の磁気浮上方法とのハイブリッド化など様々な手法で高温超電導体の利用効率の向上を実現しています。
また、蓄放電に時間が必要な環境負荷の高い化学物質を使った電池や群馬県にも多くある自然環境への影響が大きい揚水発電などに代わって、省スペース設置が可能であり、劣化が少なく蓄放電性能が高い電力貯蔵フライホイール(図2)への応用研究や、複数のフライホイールによるスマート蓄電の検討など、これからの自然エネルギーの安定化手法に寄与するテーマなど多岐にわたる研究を実施し、これからの循環型社会の構築に超電導で貢献していきたいと考えています。
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