最近、「地球温暖化や環境汚染」、「地震や台風による被害」、「少子高齢化と地方の過疎化」、「プラスチックによる海洋汚染」など、私たちが直面している深刻な問題を耳にすることが多いと思います。私たちは「工学」の目的とも言える、魅力ある未来の社会生活を支える基盤となる技術をどの様なアプローチで生み出すのでしょうか。
「地球温暖化や環境汚染」、「地震や台風による被害」、「少子高齢化と地方の過疎化」などの問題解決に貢献する「人とモノの移動(モビリティ)システム」を例に考えてみましょう。システムの利用者視点とシステムを導入する社会的視点で、システムが飛躍的に高い価値を提供するように設計することが重要です。例えば、自宅から行きたい場所に移動する際のコストをタクシー利用時より1桁安くする(経済的価値)、移動する際に放出する二酸化炭素を1桁低減する(社会的価値)、人やモノを運ぶ車両は廃棄後に自然分解する材料で70%以上を構成する(社会的価値)、電気自動車を動くエネルギーバンクとして活用して災害時の停電発生率を1桁低減する(社会的価値)。
これらの複数の飛躍的価値を生むシステムを設計するには2つの視点が大切です。1つ目は、従来、独立に存在していた情報のネットワーク、電気のネットワーク、モビリティのネットワークを融合する視点。その融合ネットワークと連携した電気自動車が人とモノを自動で運ぶシステムを設計することです。飛躍的な価値を社会に提供するため、従来の狭い分野の枠や分野間の垣根を超えた発想とも言えます。2つ目は、「工学」には元素や材料に始まり、デバイス、モジュール、回路、装置、システムという技術階層があります。各技術階層には設計論があり、それが上位の階層に価値を繋いでいきます。最終的には、最上位のシステムが提供するサービスの価値が飛躍的に高まるように、各技術階層の設計を連動させ、技術階層を超える超階層設計論によるアプローチが大切です。また、システムの構成要素をどんどん分解していくと、元素や材料になりますが、プラスチックの海洋汚染など環境汚染問題が顕在化しており、廃棄したら自然に分解するなど、資源循環性のある材料でシステムを構成する点も極めて重要です。
本学は、対象がシステムであれば、構成要素に分解して、構成要素間の関係を革新し、システムが提供する価値を飛躍的に高めるデザインシンキングの方法論を強みとしてきました。この方法論を指導原理にして、異なる分野の垣根と技術の階層を超える新たな工学で飛躍的な価値を創造する新しい工学を「デザインセントリック・エンジニアリング」と呼び、全学で取り組みを強化しています。若い皆さんと新たな工学の可能性を切り拓きたいと考えています。
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私たちが考える未来/地球を救う科学技術の定義 | 現在、環境問題や枯渇資源問題など、さまざまな問題に直面しています。 これまでもわたしたちの生活を身近に支えてきた”工学” が、これから直面する問題を解決するために重要な役割を担っていると考えます。 |