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環境への取り組み

ドローンを活用した災害廃棄物の発生量の推定

東北地区

2021年3月19日
東北地区

岩手大学 理工学部
システム創成工学科 社会基盤・環境コース
准教授 大河原正文

1.はじめに

 2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震、2018年の北海道胆振東部地震、2014年の広島豪雨、2019年の台風19号、2020年の熊本豪雨など、近年、津波、地震、台風、豪雨などの自然災害が全国各地で頻発しています。報道では、人的被害をはじめ住宅、道路や堤防などの社会インフラが被災している状況が大きく報道されています。その一方で、災害の発生に伴い必然的に大量の廃棄物(以後、災害廃棄物、図1)が発生しているのも事実です。これら災害廃棄物の処理を早期に、かつ適切に行うことは、被災地の迅速な復旧・復興の第一歩であることは言うまでもありません。災害廃棄物の処理を計画するうえで極めて重要なのが災害廃棄物の発生量を把握することです。災害廃棄物の種類は、可燃系混合物、土嚢袋に入れられた土砂(図2)、流木および不燃系混合物等、多種多様で、これら“ごちゃごちゃな”廃棄物の量(体積・重量)を正確に測定することは容易ではないのです。既存の発生量の推定方法は、例えば東日本大震災のときは発生物の原単位と建物倒壊数等から簡易的に算定されました。そのため正確な推定量とはならずその後の処理計画の見直しを迫られました。こうした課題を解決するために様々な種類や状態で仮置きされた災害廃棄物の発生量を迅速に推定できる客観的手法の開発が急務となっています。

 私ども岩手大学地盤工学研究室では、㈱奥村組(ゼネコン)と共同で発生量の予測手法に関する研究を行っています。本ページでは、災害廃棄物の処理に関する現状と対応を踏まえ、大量の災害廃棄物の処理計画上、不可欠な情報である災害廃棄物の発生量をドローンにより推定する方法について紹介します。

図1 東日本大震災により発生した災害廃棄物(岩手県山田町船越地区2013年4月撮影)図1 東日本大震災により発生した災害廃棄物
(岩手県山田町船越地区2013年4月撮影)
図2 台風第10号により発生した災害廃棄物(岩手県岩泉町2016年11月撮影)図2 台風第10号により発生した災害廃棄物
(岩手県岩泉町2016年11月撮影)

2.災害廃棄物処理の現状

2.1災害廃棄物の発生状況

 近年の地震災害や豪雨災害によって生じた災害廃棄物の発生状況を表1に示します。表に示されたとおり、災害廃棄物の発生量は、少ないものでも伊豆大島豪雨災害の約23万トン、最大で東日本大震災の約3、100万トンと災害規模によって発生量に大きなばらつきがあります。処理期間は量の多寡にかかわらず約1年~3年です。

表1 主な災害における災害廃棄物の発生量表1 主な災害における災害廃棄物の発生量1)

2.2災害廃棄物の種類と利活用

 災害廃棄物の種類としてはどのようなものがあり、利活用されているかについて、2011年3月に発生した東日本大震災の岩手県の事例を紹介します。

 図3は、災害廃棄物の処理と復興資材の活用に関する経緯をまとめたもので2)、環境省は地震発生から半年以内に津波堆積物と災害廃棄物の処理に関する基本方針を示し、災害廃棄物処理が本格的に稼働したのは2011年後半でした。その後、2012年6月までに国土交通省や林野庁から公園緑地や宅地造成盛土、海岸林に復興資材を活用する際の技術的指針3) 4) 5)が、岩手県では復興資材活用マニュアル6)がそれぞれ定められました。東日本大震災における災害廃棄物等の処理事業は、福島県の一部の地域を除いて2013年度内にほぼ終了しましたが、2014年には復興資材活用のさらなる促進等が進められました。

図3 災害廃棄物処理と復興資材活用の進捗2)図3 災害廃棄物処理と復興資材活用の進捗2)

3.災害廃棄物発生量の計測手法

 前述のとおり災害廃棄物の発生量を迅速かつ正確に把握することは重要です。ここでは2016年8月に発生した台風10号により発生した災害廃棄物に対し、UAV(以後、ドローン)を利用してその発生量を推定した例について紹介します。具体的には、災害廃棄物仮置き場において、ドロ-ンを用いて空撮計測を行い、計測の作業手順や所要時間、体積計測等について検証した結果になります。

3.1ドローン計測

 ドローン計測では無人飛行体(Unmanned Aerial Vehicle)に計測機器を搭載し、飛行しながら空中から計測するもので、今回はドローンにデジタルカメラを搭載して空中撮影し、それらの画像から点群データ、オルソ画像を生成して対象物の体積を測定しました。

3.2計測手順

 図4に計測手順の概要を示します。計測は、対象区域に標定を設置し、その座標を計測しドローンで空撮するという手順で行いました。

図4 ドローン計測手順図4 ドローン計測手順
図5 ドローンによる災害廃棄物の空撮状況図5 ドローンによる災害廃棄物の空撮状況

3.3 計測結果

 図6はドローンによる空撮結果、および表2に種別ごとの体積を示します。

図6 A地区廃棄物仮置き場の点群データ図6 A地区廃棄物仮置き場の点群データ
表2 A地区の体積解析結果表2 A地区の体積解析結果

3.4 計測結果に対する考察

 ドローン計測は、比較のために実施した現地測量、3Dレーザースキャンに比べ計測所要時間の大幅短縮(A地区 UAV:10分)が図られるとともに、十分な体積計測精度があることが確認されました。飛行高度、飛行速度、飛行ルートの最適化や天候の影響を受けるなどへの対応は必要ですが、今後、災害廃棄物の発生量の推定方法として重要なツールになることは間違いなく、さらなる研究を進めていく予定です。

参考文献

1)令和元年台風第19号等における災害廃棄物対策:環境省 環境再生・資源循環局
2) 勝見 武:災害によって生じた地盤環境課題への対応と、復興事業との調和、基礎工、Vol.43、No.9、pp.3-6、2015.
3) 国土交通省:東日本大震災からの復興に係る公園緑地整備に関する技術的指針、 2012.
4) 国土交通省:迅速な復旧・復興に資する再生資材の宅地造成盛土への活用に向けた基本的考え方、 2012.
5) 林野庁:海岸防災林造成に当たっての災害廃棄物由来の再生資材の取り扱いについて(事務連絡)、 2012.
6) 岩手県:岩手県復興資材活用マニュアル(改訂版)、https://www.pref.iwate.jp/kurashikankyou/kankyou/saihai/1006049/1006050.html(2015年2月10日閲覧)、 2013.

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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