軽量で丈夫なプラスチック製品は、現代における我々の生活のあらゆる場面において欠かせないものとなっています。プラスチック製品の持つ丈夫であるという特徴は、使い終わり、ごみとなった後も自然の作用で分解されにくいという性質をあわせ持っています。これらのプラスチック製品などの人工ごみが、適切に処理されずに海洋へ流出し環境を汚染することで、人間や他の生物に様々な悪影響を及ぼしています。このような海洋汚染を阻止したり軽減したりするためには、どのような経路でごみが海に流出し、流出したごみがどこに溜まりやすいかを調べ、効率的に対策する必要があります。このような背景から、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と鹿児島大学は共同で、海洋ごみの主要な漂着の場の一つである海岸を対象として、写真の中に映る人工のごみをピクセルレベルで自動で検出することが可能な技術開発に取り組みました(図1)。具体的には、セマンティックセグメンテーションという技術を用いており、画像の中の背景や物体をあらかじめ定義したクラス分けで塗り分ける技術です。この技術開発には、AI開発の要素技術である深層学習(ディープラーニング)を用いています。
深層学習では、多層の特徴抽出層を用いますが、それらを最適化するために大量の学習データが必要になります。本研究開発では、3500枚の海岸の画像とそれに対応する正解ラベルを用意しました。正解ラベルは、もとの海岸画像を人工ごみ、自然漂着物、砂浜、海等の計8クラスに塗り分けたもので、全て人の手作業によって作成しました。この学習データを用いてトレーニングを行い作成したモデルによって得られた検出結果と、正確なドローン観測によって得られた海岸ごみのピクセル数を比較したところ、誤差は10%前後であることがわかりました。この技術は、すでに鹿児島県の南さつま市にある海岸に設置したWebカメラ画像等の解析に用いられており、この技術を応用したモニタリング手法の開発が進められています。
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