物体内部に発生する抵抗力を観察しよう |
生体や人工物のような地球上の物体の内部には、地球の重力や非日常的な外乱(地震・強風等)を受けても不安定にならないよう常に「抵抗力」が作用しています。物体内部での「抵抗力」の伝わり方を可視化する光弾性実験を紹介します。
1)ゼラチン試料100gを作るには下のような材料が必要です。
・ゼラチン粉末(30g)
・水道水(5g以下)
・90℃の湯(70g)
2)容器等
・容器
・牛乳バック(型枠として使います。)
3)実験器具
・偏光フィルム2枚
森永製菓製等市販されているゼラチン粉末も使えます。ただし、水とゼラチンとの一般的な調合比率ですと、柔らかすぎて、モアレ縞が発生する前にゼリー自体が潰れてしまいます。ゴムのように弾力を有する実験用ゼラチン試料を100g作る時は、次のような調合比率が目安となります。
食品用ゼリー /水:
ゼラチン=97%:3%
実験用ゼラチン試料/水:
ゼラチン=70%:30%
ゼラチンが入った容器に、水道水を少しずつ入れながら、粉っぽさがなくなるまでこねる(左写真)。それから、湯を一気に入れて、ゼラチン溶液が半透明になるまで撹拌(かくはん)します(右写真)。
ゼラチンと水とを混ぜてこねる。
ゼラチン溶液を撹拌する。
牛乳バックを加工して作られた型枠にゼラチン溶液を
入れて、冷蔵庫で冷却します。
型枠にゼラチン溶液を入れる。
ゼラチン試料が固まったら型枠を出し(右写真)、ハサミ等でゼラチン試料を好きな形に切断します(左図)。ただし、複雑な形となると、簡単に崩れます。簡単な形の方が崩れずに鮮明なモアレ縞が得られます(右図)。
固まったゼラチン試料を型枠から出す。
図)ハサミなどで、好きな形に切断する。
図)ゼラチン試料に適した簡単な形の例
偏光フィルムを2枚重ねて、明るい光の方にかざしてみる。
2枚のうち1枚(例えば黄印)を回転させながら、背景が透けたり見えなくなったりする様子を観察してみます。
回転による偏光フィルムの透け具合の変化
背景が見えなくなった状態の偏光フィルムをセットし、偏光フィルム2枚の間にゼラチン試料を挿入します。
光弾性実験
左図のように偏光フィルム越しにゼラチン試料を見ながら、ゼラチン試料に力を加えると、モアレ縞が発生する様子を観察できます。
モアレ縞
橋梁(きょうりょう)のような模型を指で押すとモアレ縞が発生します(右写真)。指で押す力は「外力」です。「外力」が大きくなるとモアレ縞の数が増えます。これはたわんだ模型自体が元の形に戻ろうと力を出しているからです。この力は、「外力」に対する「抵抗力」です。「外力」を緩めると、「抵抗力」が小さくなり、左の写真のようにモアレ縞が消えていきます。
指で押す前のゼラチン試料
指で押した後のゼラチン試料
「抵抗力」と「モアレ縞」との関わりを下図に示します。
抵抗力とモアレ縞との関わり
地球上の物体が壊れずに済んでいるのは、この「抵抗力」の働きによるものが大きいのですが、物体に作用する「外力」の大きさが「抵抗力」の限界を超えると物体は壊れます。工学の世界では「抵抗力」を「応力」「内力」と呼ぶことが普通です。
このような光弾性実験は、建築工学、機械工学、医学、バイオメカニクス学など多岐にわたる分野に適用されており、本格的な光弾性実験に適した材料としてはエポキシ樹脂が使われています。
掲載大学 学部 |
筑波技術大学 産業技術学部 | 筑波技術大学 産業技術学部のページへ>> |
私たちが考える未来/地球を救う科学技術の定義 | 現在、環境問題や枯渇資源問題など、さまざまな問題に直面しています。 これまでもわたしたちの生活を身近に支えてきた”工学” が、これから直面する問題を解決するために重要な役割を担っていると考えます。 |