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環境への取り組み

廃熱を有効活用する環境調和した熱電変換デバイスの開発

九州・沖縄地区

2020年10月30日
九州・沖縄地区

宮崎大学 工学部 環境・エネルギー工学研究センター
教授・西岡 賢祐、助教・永岡 章

はじめに

「熱電変換」は、読んで字のごとく熱エネルギーを直接電気エネルギーに変える技術です。火力発電で利用される化石燃料を燃焼させることで得られる熱量のうち、50~60%が廃熱として環境中に放出されている現状があります。また自動車社会の現在、エンジンで発生する熱エネルギーも30%程度しか活用されていません。これらの廃熱から電力を取り出す熱マネジメントによって、社会全体のエネルギー消費量を有効に減らすことが期待できます。それを実現する技術の一つとして近年、熱電発電が注目されています。

 現在実用化されている熱電変換材料は、高価で有毒な元素が主構成元素として含有されており、大規模な熱電発電の普及の妨げになっている課題もあります。この問題は、熱電材料に携わる多くの研究者や技術者に理解されており、安価で環境に優しい高性能熱電材料の開発が進められています。その中で、デバイス化の指標でもある高い無次元性能指数ZT(1以上が必要)を持つ熱電材料開発競争が世界中で行われています。

 宮崎大学工学部環境・エネルギー工学研究センターは、熱エネルギーや太陽光エネルギーを有効活用するために、材料開発といった基礎研究や屋外におけるフィールド実験といった応用研究を実施しています。

高い熱電性能を持つ環境調和した新規熱電変換材料の開発

 図1は、主要な熱電材料と新規環境調和型熱電材料のZT推移を表します。有毒な鉛やレアメタルであるテルルを含んでいるPbTeやBi2Te3といった主要な熱電材料は1950年代から開発が始まり、現在高いZT >2を達成している系も報告されています。これらの熱電材料は、室温~300ºC程度で動作し、変換効率は10%程度です。近年、環境調和したCu2S系やSnS系材料の開発も活発に行われていますが、まだまだ発展途中です。さらに大部分のレコードZTはアメリカと中国から報告されているのが現状です。

図1 主要な熱電材料と新規環境調和型熱電材料のZTの推移図1 主要な熱電材料と新規環境調和型熱電材料のZTの推移

 本センターで開発した環境調和した元素から構成されるCu2ZnSnS4 (CZTS)単結晶(図2参照)はZT=1.6を500ºCの環境下で達成しており、近年報告の無い日本から発信する世界最高効率のZT熱電材料となっています。単結晶は元素が規則正しく並んだ物質であり、この材料開発は、宮崎大学が保有する特許を含めたノウハウの塊です。将来的にはZT >2の壁を越えることを目標に、現在の主要な熱電材料に対抗できるように研究開発を続けています。

図2 独自のCZTS単結晶技術で作製した単結晶インゴットとウエハー図2 独自のCZTS単結晶技術で作製した単結晶インゴットとウエハー

 この環境調和した熱電材料を用いて自動車廃熱を有効活用することで、将来的に燃費・電費の向上が期待できます。図3に実際の100 ºC熱源と大気中との温度差で生じるCZTSの熱起電力を示します。熱起電力56 mVと高い値を示し、発電量の指標となるパワーファクターに注目すると、CZTSは同じ環境調和型Cu2S系材料より2倍以上の値を示します。これにより、デバイス化へのポテンシャルと環境調和型熱電材料としての優位性を実証しています。

図3 実際のCZTS単結晶の熱起電力図3 実際のCZTS単結晶の熱起電力

おわりに

 今回は、宮崎大学におけるエネルギー研究、特に熱電変換材料開発について紹介しました。熱電発電はまだまだ変換効率が低いため、これから更なる研究開発が必要な分野です。もっと言えば、「のびしろ」が十分に期待出来る研究課題です。例えば、近年、データを活用する超スマート社会の実現に向けてIoT機器の爆発的な増加が予想されており、これらの機器に電力を供給する小型独立電源の開発が求められています。身の回りの数十度から製鉄所における数百度といった様々な環境下に存在する熱による温度差を利用する熱電発電は、独立発電技術として期待されています。人間自身が一つの熱源であるように、我々が得やすい「熱エネルギー」の有効活用は、今後の科学技術の発展のために必要な大きなファクターであると考えられます。本稿をお読みいただいた読者が宮崎大学における熱電発電開発に興味をもっていただければ幸甚です。

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