トップページ > なんでも探検隊 > 高速LPWA通信で定置網の中を可視化

なんでも探検隊

高速LPWA通信で定置網の中を可視化

2023年3月9日
東京海洋大学 情報通信工学研究室
大島 浩太

 海に囲まれた日本にとって、漁業は重要な産業です。漁の方法は様々なものがありますが、海に大きな網を固定的に設置して魚が網に入るのを待つ定置網という漁法があります。近年、SDGsの目標の1つである「海の豊かさを守ろう」において、魚の過剰な漁獲を抑制して海洋資源を適正に管理しましょうという動きが世界的に行われています。定置網は網内に入った魚を逃がすこともできるため過剰な漁獲につながりにくく、資源管理がしやすい漁法として注目を集めています。しかし定置網は、どのような魚種と量が網に入っているかは、船で定置網に行って確認する必要があります。網から魚を取り出すにも労力が必要ですので、網にあまり魚が入っていない場合は船の燃料を消費して確認するだけに留まる場合もあります。

 我々は、網の中の様子を映像で確認できるようにするためのカメラシステムの開発に取り組んでいます。カメラシステム実現に向けた課題としては、陸から1~2キロメートル離れた定置網と映像をやり取りできる通信速度が利用できること、30メートル程度の水深の水圧に耐えられるカメラであること、メンテナンスがしやすいことなどが挙げられます。我々の取り組みでは、LPWA(Low Power Wide Area)通信技術の中でも、2022年末に日本での利用が認められたWi-Fi HaLow(IEEE802.11ah)という、長距離の無線通信を可能としつつ、他のLPWA技術と違い映像伝搬に耐えられる通信速度を利用できる通信方式を利用しています。またカメラは、水中ドローンで用いられるレベルの容器を使うことで水圧に耐えられるものを使って容器を作りました。容器の中に高解像度のカメラを封入して、定期的に撮影した画像をUSBケーブルを通じてWi-Fi HaLowの送信装置に送り、陸に設置したWi-Fi HaLowの受信装置に画像を送信するようにしています。

 神奈川県の海上に設置された定置網内部をカメラシステムで撮影したところ、魚と、海中の網の状況を画像で確認することができました。通常のLPWAではセンサが検知した小容量データのみの伝送が可能ですが、Wi-Fi HaLowを用いることで、監視対象に赴かなくても画像で視覚的に状況を確認することが可能になります。このシステムを使って、網から逃がす必要のある魚が入っていないか、魚を定置網から取り出すコストに見合った漁獲量が見込めるかなどを陸にいながら判断して定置網を運用できるようになると考えられます。

機材写真機材写真
※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

関連記事

2023-01-20

Pict-Labo

ミクロの化石から地球環境を展望する

秋田大学国際資源学部

2022-01-21

なんでも探検隊

ワイヤレスでエネルギーを伝える技

豊橋技術科学大学

2024-04-19

環境への取り組み

システム工学部の環境の学び

和歌山大学システム工学部

2022-11-18

おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

カメラと映像の仕組み ~おもしろ写真を撮ってみよう~

和歌山大学システム工学部

2015-11-19

おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

模型飛行機を作って、飛ばそう!

愛媛大学工学部

2023-09-15

なんでも探検隊

まだ知られていない厳冬期の絶景を求めて

北見工業大学工学部

東京海洋大学
海洋工学部

  • 海事システム工学科
  • 海洋電子機械工学科
  • 流通情報工学科

学校記事一覧

なんでも探検隊
バックナンバー

このサイトは、国立大学55工学系学部長会議が運営しています。
(>>会員用ページ)
私たちが考える未来/地球を救う科学技術の定義 現在、環境問題や枯渇資源問題など、さまざまな問題に直面しています。
これまでもわたしたちの生活を身近に支えてきた”工学” が、これから直面する問題を解決するために重要な役割を担っていると考えます。