地震の際に、「液状化」という言葉をよく耳にします。液状化とは、地盤がまるで液体のようなふるまいをすることです。地盤が液体のようになると、時にはマンホールのように地中に埋まっているものは地表面に浮かんでくるし、地表面にあるアパートなどの構造物は地中に沈んでしまいます。
なぜこのようなことが起こるのか、簡単な実験を通して勉強してみましょう。
洗面器の中に乾いた砂を入れ、水を入れてくまででほぐし、砂を湿らせます。
スコップを使って表面を平らにならします。
鉄球は砂の表面に、ピンポン玉は砂の中に埋めるようにして置きます。
ゴムハンマーを使って、洗面器の淵を素早く叩いてみてください(軽く叩いても大丈夫です)。
ゴムハンマーで洗面器の淵を叩いただけなのに、完全に埋めたはずのピンポン玉が浮き上がってきて、表面に置いただけの鉄球が完全に沈んでしまいました。
ここで、実験の内容に合わせて、液状化が発生するしくみについて考えてみましょう。
地震が発生すると、地面が素早くゆすられます。
実験では洗面器の淵をゴムハンマーでたたきましたが、これにより洗面器の中に地震が発生したのと同じ現象が起こっています。
ゆすられた地盤が緩い砂だと、ゆすられたときに全体の体積が減少しようとします。
Point
砂などのツブツブな材料がゆるく積もった場合には、形を変えると体積が減少します。このことをダイレイタンシーといいます。
乾いた砂であれば体積が減少するだけですが、砂粒の間に水がある場合には、水は非圧縮性の物質なので体積を変化させることができません。したがって、砂粒間の水に圧力(水圧)が発生します。
ゆすられる時間が長いと、それだけどんどん水圧が大きくなってしまい、最後には砂粒どうしがバラバラになって液体のようになります。これが液状化の発生です。
では、なぜ洗面器の中の鉄球が沈み、ピンポン玉が浮いてきたのでしょうか?
液状化が発生すると、砂と水が混ざった液体となっているので、その密度は1.8~2.0g/cm3と水の密度より重くなっています。したがって、浮力の影響によって、軽いピンポン玉は浮き上がり、重い鉄球は沈んでいきました。
これまで示したように、液状化は、地盤が①砂のようにツブツブな材料でできていて、②緩く積もっており、②隙間に水がある場合に発生してしまいます。
ですので、液状化を発生させないためにも、地盤を密に詰めたり、隙間の水を抜くなどの対策をすることで液状化の発生は抑制することが可能です。
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